農業の構造転換にとどまらず、将来的には、経済社会のあり方を大きく変えることになるかもしれない。

 参加12カ国の利害が複雑に絡み、難航を極めた環太平洋連携協定(TPP)交渉は、米国で開かれた5日の閣僚会合で、大筋合意した。

 TPPは、各国間の輸出入を活発にするため、関税を撤廃(もしくは引き下げ)し貿易上の障壁を取り除くことと、投資、知的財産、政府調達などの分野で統一的なルールを整備する狙いがある。

 経済規模で世界の4割を占める巨大経済圏が誕生することになるが、中国、韓国、台湾、フィリピンなどは未加入である。TPPを中国に対抗するための経済ブロックにするのではなく、各国との開かれた経済連携を模索すべきだ。

 政府は衆参両院の国会決議を受け、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなどの甘味資源作物を「重要5項目」と位置づけ、関税撤廃の例外扱いを求めてきた。

 交渉の結果は農・畜産業関係者にとって、かなり厳しいものだった。主食のコメは関税の「撤廃」は免れたものの、米国や豪州に対し、無関税で輸入する枠を設定した。牛・豚肉は一定の期間をかけて関税を大幅に引き下げることで決着した。

 砂糖は高糖度の精製用原料糖の関税が撤廃される。

 翁長雄志知事は、6日の県議会で「問題点がたくさんあるというのが正直な気持ち」だと述べた。聖域が守れなかったことに対する県内関係者の不安は大きい。

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 関税が下がることで、例えば、牛肉や豚肉、ワイン、バターなどの輸入品が安く手に入るようになることが期待される。TPPによって家計や企業が恩恵を受けると思われる事例は決して少なくない。

 ただし、その半面、高い関税に守られてきた農業、畜産業などの分野は、激しい競争にさらされ、厳しい経営を強いられるのは確実である。

 沖縄の離島は、サトウキビに依存しているところが多い。さまざまな問題を抱えながらも、制約があって、キビに代わる基幹作物を見いだしかねているのが現状だ。

 もし関税が撤廃されたり大幅に引き下げられたりすれば、壊滅的打撃を受けるのは間違いない。県内の養豚農家、肉用牛農家も大きな影響を受けそうだ。

 離島の農・畜産業は、地域の人口減少の歯止めとなり、地域コミュニティーを支える役割を果たしている。「安い輸入品が入るようになればいいではないか」という指摘は短絡的な発想である。

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 TPPは、各国政府の署名と、議会の承認手続きを経て発効するが、政府はこれまで、交渉相手に手の内を明かすことになるとの理由から、途中経過を十分に説明してこなかった。

 政府は農業分野などの国内対応を取りまとめる「TPP総合対策本部」を近く設置するという。

 交渉経過と合意内容について情報を公開し、大筋合意の「効果」と「影響」「対策」について国民にわかりやすく説明することが大切だ。