環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受け、農林水産省は関税が撤廃される農林水産物を追加発表した。

 現在関税がかかっている834品目のうち約半数が撤廃されることになる。果物から食品加工品、水産物に至るまで多岐にわたっている。

 沖縄関係では「重要5項目」の一つである牛・豚肉について品目ごとの具体的な合意内容が初めて明らかになった。パイナップルの生果やマグロ類も公表されたが、関係者は影響は限定的とみている。

 TPPは交渉が秘密裏に進められ、情報開示が極めて不十分だ。政府からは生産農家や消費者に対し、メリットとデメリットについて説明らしい説明がいまだにない。不安が高まるのは当然だ。

 政府はTPPの影響額の試算を急ぐとしているが、合意内容の公表は一部にすぎない。農水省が都内で開いた農林水産団体や都道府県向けの説明会では、詳細な説明を求める声が相次いだ。これもまた当然である。

 安い輸入品との激しい競争にさらされ、日本農業は「切り捨て」の危機に立たされるといっても過言ではない。

 政府は国の基盤となる農業を産業構造の中でどのように位置付けようとしているのか。国会決議に基づき重要5項目を関税撤廃の例外扱いとすることを求めてきたが、大筋合意との整合性はどうなのか。ただすべき点は多い。

 これらを徹底論議するためにも政府・与党は臨時国会を開くべきだ。このままでは国民不在というほかない。

    ■    ■

 政府の総合対策本部で、安倍晋三首相は「攻めの農業への転換」を強調した。生産性を高め、海外と競争できる大規模な対策を打ち出す方針だが、順序が逆だ。蚊帳の外に置かれた生産農家へ説明し政府への不信感を払拭(ふっしょく)するのが先だ。その上で要望を聞き、対策に生かすのが筋である。

 政府は所得補填(ほてん)制度や補助金の導入を検討しているようだが、「バラマキ」につながらないか懸念される。コメが部分開放された1993年の関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンド合意で政府は8年間で計約6兆円の対策を取りながら、農業と関係のない事業などに使われ、農業の体質強化につなげることができなかったからだ。

 いうまでもなくTPP大筋合意は、締結ではない。参加国が協定文を作成し署名、日本は協定承認をめぐり衆参で審議する。国会承認、関連法案可決で締結に至る手順だ。日本を含む参加国の事情で紆余(うよ)曲折があるかもしれない。

    ■    ■

 沖縄は小規模の生産農家が多い。高齢化が進み、若い担い手が少ない。サトウキビや畜産を基幹産業とする離島が多い。農業が大打撃を受ければ地域全体が沈みかねない。

 翁長雄志知事を本部長とする県TPP対策本部会議が開かれたが、情報不足だ。県は2013年にすべての関税が撤廃された場合、農畜水産物の生産減少額は581億円と壊滅的な打撃を受けると試算した。政府にすべての情報を求め、どの分野でどのような影響が出るのか、試算し直した上で対策を講じてほしい。