◆暖かさで北上する本土、寒さで南下する沖縄

 「八重岳のサクラ咲き始める 日本一早い桜まつり、1月20日から(1月17日配信)」というニュースが届いた。沖縄では今週末から2月中旬にかけて、県内各地で桜祭りが開催される。桜の季節到来だ!

 桜を楽しむその前に、昔から不思議に思っていた謎を解決したい。そう、「沖縄の桜前線は南下する」謎だ。沖縄気象台観測課の神谷吉隆さん(主任技術専門官)に教えてもらった。

鮮やかなピンク色の花を咲かせるヒカンザクラ(渡辺奈々撮影)=1月16日午後、本部町・八重岳
ソメイヨシノとヒカンザクラの、休眠打破の違いが鍵です

◆桜の目覚めに必要なモノ!

 ―桜が咲くメカニズムを教えてください。

「沖縄の冬は三寒四温」と話す神谷さん

 神谷 サクラは夏に翌年の花のもとになる花芽(かが)を形成し、それ以上は成長せずに休眠したまま年を越します。休眠から覚めて成長を始める(休眠打破)には、低温にさらされる必要があります。その気温がソメイヨシノは5℃前後、ヒカンザクラだと10℃台、具体的に言えば15℃前後でしょか。

 眠りから目覚めた桜は気温の上昇に合わせて成長し、つぼみができて花を咲かせます。
 ソメイヨシノは休眠打破に5℃かかるため、沖縄では生育に向いていません。奄美大島も同じ理由で、ヒカンザクラがソメイヨシノの代替種目になっています。

 ―開花の条件には寒さが必要なんですね。沖縄で南下するのはどうしてですか?

 神谷 沖縄本島は南北に100キロ近くあります。寒波は高緯度から伝わるので、北部が南部よりも早く10℃台の気温に下がり、休眠打破を引き起こします。目覚めてしまえば、あとは成長するだけ。したがってサクラ前線は北部から南部へ南下します。

 一方、本土はほぼ全国的に冬の間に休眠打破に必要な気温まで下がります。冬に目覚めたソメイヨシノの花芽は、気温の上昇に合わせて開花していくので、桜前線は北上していきます。

那覇市末吉公園の桜。満開になるのが楽しみですね。

 また、沖縄の桜前線は山地から平地へと降りてきます。標高が100メートル高くなるごとに、気温が0・6℃下がり、休眠打破が促されるためです。これも本土とは逆の現象ですね。

 ―北部と南部の気温差はどれくらいですか。

 神谷 桜前線の南下では、気温差そのものはそれほど影響しません。冷え込む時期の違いですね。

 そして休眠から目覚めたヒカンザクラは、ソメイヨシノほど気温に敏感ではありません。沖縄の平均的な気温で順調に成長します。

ヒカンザクラの花の間を飛び回るメジロ(渡辺奈々撮影)=1月15日午後、本部町・八重岳

◆桜は春の花なのか…?

 ―桜が咲くと季節は春でしょうか。

 神谷 う~ん。春。春ですか。気温の上昇に合わせて開花・満開になる本土では、まさに春を告げる花と言えます。

 しかし沖縄はどうでしょうか。沖縄の冬は「断続的」に冷え込むのが特徴です。寒い、暖かい、寒い…を繰り返します。そして、桜の開花後に最も寒い時期(1月下旬から2月上旬)を迎えるので、春を告げる花とは言いづらいですね。

 ―北部の桜が先に咲くのに、南部・那覇市の開花がニュースになるのは?

 神谷 気象台は標本木(観測用の特定の樹木)の状況で開花や満開日を観測していますが、標本木は気象台から5キロメートル以内と決まっています。沖縄気象台の標本木は、末吉公園(那覇市)にあります。末吉公園で開花を確認するより先に、名護市や本部町では咲いています。北部と南部では満開にもタイムラグがあるので、沖縄では2回、花見を楽しめますね。

標本木は、この看板が目印。末吉公園内の川沿いにあります。
開花が観測されたヒカンザクラの標本木=1月10日、那覇市・末吉公園(沖縄気象台提供)

 ―ことしはいつ頃が満開でしょうか。

 神谷 実は気象台は、開花と満開日の予想はもうしていません。標本木を観測して、5~6輪咲いた状態を開花日、全体の80%以上が咲いた状態を満開日としています。平年(那覇)では開花は1月18日、満開は2月4日です。ことしの開花は10日と早く、満開も早いかと言えば難しい。開花後に一番寒い時期が来るので成長が読みづらく、標本木に通い詰めです。

◆沖縄県内の主な桜祭り

「第40回もとぶ八重岳桜まつり」・・・何はなくとも、沖縄の桜祭りはここから!

【期間】1月20日(土)~2月4日(日)【会場】本部町八重岳桜の森公園

「第11回今帰仁グスク桜まつり」・・・夜桜と今帰仁城跡のライトアップで幻想的に。

【期間】1月27日(土)~2月12日(月)【会場】今帰仁城跡

「第56回名護さくら祭り」・・・オリオンビールと楽しみたい桜祭りです。

【期間】1月27日(土)・28日(日)【会場】名護中央公園

「第12回やえせ桜まつり」・・・当日以外も2月12日までライトアップしています。

【期間】2月4日(日)【会場】八重瀬公園

・「なはさくらまつり」・・・桜祭りのトリ的存在。平地なので、花見がしやすいかも。

【期間】2月21日(水)~2月25日(日)【場所】与儀公園