翁長雄志知事が沖縄防衛局に名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て承認を取り消す文書を13日付で送付するそうだ。防衛局が受理した時点で効力が発生し、辺野古沿岸での海上作業ができなくなるという。知事就任から約10カ月。もっと早く取り消していたら何がどう変わっていただろう。

 翁長知事は6月の訪米、8月の日本政府との集中協議に続き、9月は国連人権理事会で「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を、世界中から関心を持って見て」と強調し、「あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟だ」と訴えた。

 沖縄の歴代知事で初めて国連の場で「沖縄の人々は自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えたのは確かに大きな意義がある。しかし日米両政府は計画を堅持し、本体工事着工へ向けた準備を「粛々」と進めるなど、歯止めとなる方策を持たぬまま時が流れていった。

 もし、知事が3月末までに取り消しまたは撤回をした上で訪米し、米有力議員らと面談し、「前知事による埋め立て承認を取り消した。政府との法廷闘争という大きな壁に直面するが、あらゆる手段を使って新基地建設を止める覚悟だ」と訴えていたとする。

 たとえ日米両政府の計画でも、法廷での闘争が予想される事態となれば、米議会は「今後の展開を注視する必要がある」といった注釈を国防権限法案の中に盛り込み、「移設問題はわれわれの手を離れた」といった認識も変えていたかもしれない。

 国連もそうだ。翁長氏が国際舞台の場で法的瑕疵(かし)がある埋め立て承認を取り消したと自ら明言した上で、沖縄という小さな地方自治体が二つの大国に立ち向かわざるをえない状況を訴えていたとする。知事の訴えとともに、法廷で係争中の計画を強行する日米両政府の不当性が世界へ発信され、両政府に対する国際世論による圧力の壁も築けていたかもしれない。

 辺野古移設計画を撤回するスタートラインはいったいどこにあるのだろう。

 「新知事が本当に辺野古移設断念を望むなら、まず埋め立て承認を白紙化することだ。そうして初めてスタートラインに立てる」

 昨年末にそう語ってくれた米元高官に「ようやくスタートラインかもしれない」と報告すると「水を差すようで悪いが」と前置きした上でこう答えた。「安保関連法が成立した今は政治的環境がまったく違う。ラインがまだあるのかどうかさえ見えにくい状況かもしれない」(平安名純代・米国特約記者)