就任から308日目、名護市辺野古の新基地建設に反対してきた翁長雄志知事は13日午前、建設の根拠となる埋め立て承認の取り消しを沖縄防衛局に伝達する。政府との対話を重視する一方、弁護士との会談を重ね、周到に準備を進めてきた。建設阻止に向けた最大の知事権限の一つだが、翁長知事は法廷闘争を見据え、「第一歩」と位置づけている。(政経部・福元大輔、比屋根麻里乃)

 「今日で決まるか、どうかは分からない」

 11日午前10時20分、知事室のある県庁6階に安慶田光男副知事が姿をみせ、「取り消しの日時が決まるのか」という質問をけむに巻いた。庁内では平日より軽装の関係課職員らが資料の準備などに追われていた。

 町田優知事公室長、末吉幸満土木建築部長、法律顧問の竹下勇夫弁護士らも次々と訪れ、同50分には翁長知事が到着。午前11時に会議は始まった。

 約1時間の会議では、知事が取り消しを発表後、沖縄防衛局に文書を届ける時間や、記者会見の時間、マスコミに配布する資料などの詳細を確認。弁護士から法律的に防衛局のとりうる対抗措置と、その場合の県の対応について複数例が紹介されたという。

 取り消しへ向けた手続きとして、県は9月14日に沖縄防衛局からの意見聴取を開始。政府から行政手続法の聴聞を実施すべきだと指摘を受けると、「手続きでもめるより、実態的な中身で判断されるべきだ」と応じ、聴聞に切り替えた。防衛局は出頭せず、文書提出で対応した聴聞も7日に終え、取り消しの判断が迫っていた。

 聴聞を実施した7日から、すでに事務方も取り消しに向けた必要書類の準備を開始。取り消し当日か翌日には防衛局が国土交通相に不服申し立てすることも見越し、新設した新基地建設問題対策課を中心に法廷闘争の準備を進めてきた。

 「国の対抗措置の次の次まで考えられることは当然準備している」(県幹部)

 政府との集中協議や聴聞手続きを挟み、一見「回り道」をしたようにも映る承認取り消しまでの手続きは、県の準備態勢を周到に整える期間になった。

 那覇大綱挽(ひき)前の11日午前に会議が設定された理由に、県幹部は「弁護士と最後まで調整し、想定される事態に備えたということだ」と前代未聞の取り消しとその後の対応に、万全を期したと打ち明けた。

 辺野古の海上やキャンプ・シュワブのゲート前で抗議行動を展開する住民らは、知事の取り消しが決まれば、さらに運動を強化するよう呼び掛けている。県と政府の法廷での争いも迫り、緊張の度を増している。

■国、手続きの正当性主張

 【東京】翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しに対し、政府は「承認手続きに何ら瑕疵(かし)はなく、翁長氏の取り消しは違法だ」と批判し、真っ向から対峙(たいじ)する。

 国側が主張するのは2013年に当時の仲井真弘多知事が承認するに至った手続きの正当性だ。

 防衛省は辺野古に関する環境影響評価(アセスメント)の過程で07年から08年にかけ沖縄県知事から6回意見を聴取し、アセスに反映したと説明。さらに、13年3月に仲井真知事へ公有水面埋め立て承認願書を送付後、同年12月に承認されるまでに知事から4回質問があり、適切に答えてきたと強調、「手続きは誠実に、丁寧に時間をかけた正当なものだ」(中谷元・防衛相)と主張する。

 また、菅義偉官房長官は「既に行政としての承認の判断が下っているから工事を進めている」と述べ、「行政の継続性」を強調。翁長氏が承認取り消しを表明した9月14日の会見では、「翁長知事は政府、沖縄県のさまざまな人たちの危険除去に向けた努力を無視するようなものだ」と強く批判し、承認取り消しの姿勢を非難している。