近年の報道や調査を見ていると、沖縄県は健康長寿とは言いづらい状況になってきているのかもしれません。がんの治療成績の側面から見てみると、他府県と比較して1990年代はがんによる死亡率がとても低い県でしたが、近年はちょうど真ん中あたりに悪化しています。これはなぜでしょうか? 放射線治療という側面から考えてみたいと思います。

 がんの三大治療といえば、「手術・化学療法(抗がん剤)・放射線治療」です。近年はこれに免疫療法を加えて四大治療とする向きもあります。がん治療には専門の学会や研究会が推奨する「標準治療」というものがありますが、国立がん研究センターの調査では一部のがんや治療法で標準治療の実施率が低いことが判明しています。われわれが県内の放射線治療の現状調査をした際に、県内の全がん患者さんに対する放射線治療の実施率は2割程度であることが判明しました。これは他府県の平均(3割程度)、欧米の平均(5~6割)と比較して低い数字です。もしかしたらこのような低い放射線治療実施率が治療成績の低さの一因かもしれません。

 ご自分ががんを患っている、もしくは家族や周りの方にがんを患っている方はいらっしゃいますか? そして主治医の先生から治療の選択肢が提示されたときに放射線治療の話を聞いたことがありますか? 放射線治療は“怖い”とのイメージが先行して、説明を受けぬまま避けている方はいませんか? 最新のX線治療である強度変調放射線治療(IMRT)は、かつての放射線治療と比較して病巣に対し放射線の集中性が高まり、周囲の正常な臓器の線量を低下させることが可能な治療です。

 現在、県内の放射線治療医が常勤で勤務している施設はすべてIMRTでの治療が可能です。また最新の放射線治療として粒子線(陽子線や重粒子線)があるのはご存じでしょうか? X線と比較してより病巣に集中させ、周囲の正常な臓器の線量を低下させることが可能な治療です。標準治療や保険で可能な治療はまだ一部ですが、ご自身や家族のがんに適応があるかも知れません。県内には施設が無いため、知識のある放射線治療医が相談外来を開設していたり、市民公開講座を開催したりしていますので、それに参加してみるのも良いでしょう。

 放射線治療を受ければ必ずがんが完治する、というわけではありませんが、がんに対する知識を深め、選択肢を理解し、複数で相談しながら治療を決定していくことはとても価値のあることだと思います。

 がん治療に対する知識を深めて、目指せ健康長寿復活!(有賀拓郎・琉球大学医学部付属病院)