3月とまったく同じ手法である。知事権限の実質的無力化を狙ったこの手法は、政府の意図とは裏腹に復帰後も続く米軍優先の政策によって、沖縄の地方自治権が著しい制約を受けていることを浮かび上がらせる。

 翁長雄志知事が名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したことに対し、沖縄防衛局は14日、行政不服審査法に基づき取り消しの無効を求める審査請求書と、裁決が出るまで取り消しの効力を止める執行停止申立書を石井啓一国土交通相に提出した。承認取り消しの翌日、間髪を入れず対抗措置に打って出た。

 埋め立て承認は公有水面埋立法によるため、同法を所管する国交相が、防衛局の意見と県の反論を聞いた上で結論を出す。しかし国の機関である防衛局の申し立てを、同じ国の機関である国交省が審査するというのでは、初めから結論が見えている。

 ことし3月に翁長知事が防衛局に出した海底作業の停止指示に対し、関係法を所管する農相が指示を無効にする執行停止を決めた時と同じ経過をたどることは容易に想像できる。

 そもそも行政不服審査法は、強大な公権力から「国民の権利利益の救済を図る」ものだ。辺野古の埋め立ては、国が米国に基地を提供するための事業であり、行政主体としての国が審査請求することを想定していない。

 「埋め立て承認は一般私人と同様の立場で受けた」とする政府の解釈は法の趣旨をゆがめる。

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 防衛局は取り消しを不服とする申立書の中で、普天間飛行場を県外に移設できない理由として「司令部、陸上・航空・後方支援部隊を組み合わせた海兵隊の一体的運用」を挙げている。

 だが現実には在沖海兵隊の主力部隊である第4海兵連隊はグアムに移ることが合意されている。残る第31海兵遠征部隊(31MEU)もアジア太平洋地域をローテーションで回っていて常時沖縄にいるわけではない。兵士を運ぶ揚陸艦の拠点は佐世保、戦闘機部隊の基地は岩国にあり、運用は既にばらばらだ。

 さらに防衛局は執行停止が必要な理由として普天間の危険性除去の「遅滞」を強調するが、前日の会見で翁長知事は「(新基地が完成するまで)10年間、普天間をそのままにしておくこと自体が固定化だ」と痛烈に批判した。

 前知事が安倍晋三首相と約束したという「5年以内運用停止」も既に破綻しており、移設計画の見直しこそが危険性除去の近道である。

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 普天間飛行場の返還を米側に提起した当時の橋本龍太郎首相は「地元の頭越しには進めない」との言葉を繰り返した。事件や事故、騒音、環境汚染など基地から派生する問題が県民生活に大きな影響を与えている以上、この約束は最低限の原則である。

 このまま移設が強行されれば、日本の安全保障のためだと言いながら安全保障の土台を崩すことになるだろう。

 政府はいま一度、「県民の頭越しには進めない」という原点に立ち返るべきだ。