昨年、国内販売が始まり注目商品となったスマートスピーカーをご存じだろうか。声での指示を人工知能(AI)が認識し、音楽を流したりニュースを読み上げたりする。専用の家電をつなぐと空調や照明の操作も可能に

▼先行して普及が進んだ米国では数年で売り上げが飽和状態になると予測されるほどのヒット商品。ラスベガスで1月上旬に開かれた国際家電見本市では、一歩進んだ画面のあるスマートディスプレーも関心を集めた

▼一方で、便利さは不安と紙一重でもある。ITセキュリティー専門家は「利用者データがサービス提供以外の目的で使われるのを防ぐ必要がある」と指摘する

▼今から70年前、英国作家オーウェルが結核と闘病しながら書いた小説「1984年」にテレスクリーンという似た機械が出てくる。AI家電との違いは、持ち主の行動を政府が付属のカメラで監視する機能を持っている点だ

▼小説では「偉大な兄弟」を頂点にした国家が人々の思想まで管理統制して歴史的事実まで書き換え、国民は国家存続のために存在するという絶望的な「未来」が描かれる

▼物語の舞台となった1984年はとうに過ぎ去った。だが技術の進展や「ポスト真実」の横行など、そこで描かれた世界観は古びるどころか、より現実味を帯びてきている。21日はオーウェルが没した日。(玉城淳)