「ブラックボックス」に光を当てた判決とはいえ、箱の中はまだほの暗い。

 国の情報収集などに使われ、官房長官の裁量で支出される内閣官房報償費(機密費)について、最高裁は相手や使い道が特定されない一部文書の開示を認める初の判断を示した。

 市民団体のメンバーが、小泉内閣の安倍晋三官房長官、麻生内閣の河村建夫官房長官、第2次安倍内閣の菅義偉官房長官の機密費に関連する行政文書の開示を国に求めた3件の訴訟の上告審判決である。

 最高裁が開示を命じたのは、機密費のうち重要政策の関係者に非公式に協力を得る「政策推進費」の受払簿、出納管理簿などだ。これにより機密費全体からの繰入額や月ごとの支出額を知ることができる。

 他方、情報提供の対価として支払う「調査情報対策費」、贈答品などの購入費にあてる「活動関係費」は、「支払い相手や使途を相当程度の確実さで特定できる場合がある」として開示が認められなかった。

 機密費の特殊性と情報公開の必要性のバランスに配慮した判決ということなのだろう。

 秘匿とされてきた機密費運用の一端が明らかになることで、支出をチェックでき、でたらめな使い方に歯止めがかけられるとの評価がある。秘密の厚いベールに風穴をあけた意味は小さくない。

 ただ、いつ、誰に、何のためにという肝心な部分は、いまだに検証のしようがないブラックボックスの中だ。

■    ■

 機密費には、支出方法や目的を定めた法令がなく、これまで黒塗り文書すら公開されてこなかった。

 「目的外使用」の疑惑がたびたび取り沙汰されるのは、その不透明さからである。

 小渕内閣で官房長官を務めた野中広務氏は2010年、共同通信の取材で「1カ月当たり、多い時で7千万円、少なくとも5千万円くらい使っていた」と告白している。首相のほか国会で野党工作に当たる自民党国対委員長、政治評論家や野党議員らにも配っていたという。

 沖縄県知事選挙でも飛び交ったが、重要な国政選挙や地方選挙の「軍資金」として使われているとのうわさも絶えない。

 いらぬ憶測を呼ばないためにも政府自ら使い道の透明化を進め、国会でも開示範囲を広げる議論を戦わせてもらいたい。

■    ■

 官房機密費として計上される予算は年間14億円余り。性格上使途を公開できない部分があるとはいえ国民の税金である以上、理解を得るルールの構築が求められる。

 旧民主党は野党時代に、機密費使用に当たって記録書を保存した上で、機密性の高いものについては25年経過後の公表を義務付ける法案を提出したことがある。

 秘匿し続けるだけでは、「政権のための裏金」といった疑念は払拭(ふっしょく)できない。

 記録を残し、少なくとも事後検証が可能な仕組みを検討すべきである。