沖縄本島の北部、芭蕉布の里として知られる静かな大宜味村喜如嘉の海で、その悲劇は起こりました。産卵のために上陸したアオウミガメが車にひかれて死ぬというニュースは、沖縄の人以外にもインターネットなどで広く読まれ、多くの人の悲しみを誘いました。

放流を待つアオウミガメの赤ちゃん=14日午後7時52分、大宜味村喜如嘉(金城健太撮影)

国道(右側)でひかれ、人の手で歩道に上げられたアオウミガメ=17日午前0時ごろ、大宜味村喜如嘉(米須邦雄さん提供)

砂浜から直接道路に出られる状況を説明する米須さん=18日、大宜味村喜如嘉

死んだ母ガメの体内から卵が取り出され、ふ化する子ガメ=13日(沖縄美ら島財団提供)

放流を待つアオウミガメの赤ちゃん=14日午後7時53分、大宜味村喜如嘉(金城健太撮影)

放流を待つアオウミガメの赤ちゃん=14日午後7時52分、大宜味村喜如嘉(金城健太撮影) 国道(右側)でひかれ、人の手で歩道に上げられたアオウミガメ=17日午前0時ごろ、大宜味村喜如嘉(米須邦雄さん提供) 砂浜から直接道路に出られる状況を説明する米須さん=18日、大宜味村喜如嘉 死んだ母ガメの体内から卵が取り出され、ふ化する子ガメ=13日(沖縄美ら島財団提供) 放流を待つアオウミガメの赤ちゃん=14日午後7時53分、大宜味村喜如嘉(金城健太撮影)

 あれから2カ月。亜熱帯の動植物などの研究をしている沖縄美ら島財団が、アオウミガメの体内から卵を取り出し、人工ふ化に成功しました。80個の卵から新たに誕生した子ガメは16匹。美ら島財団や日本ウミガメ協議会、近くの子どもら、たくさんの人に見送られ、夜の大海に泳ぎだしていきました。

 死んだ母ガメの卵がふ化した事例は世界的にも確認されていないといい、この奇跡に誰もが、「お母さんの分も頑張って生きて」と願いました。

 3つの記事と写真、動画をまとめました。

■産卵で上陸 ウミガメひかれ死ぬ 沖縄・大宜味村の国道(2015年8月20日)

 大宜味村喜如嘉の国道58号で16日夜、産卵のために上陸した雌のアオウミガメ(絶滅危惧2類)が車にひかれて死んだ。日本ウミガメ協議会によると、成体が陸上で事故死した記録は全国にもない。北部国道事務所が対策を検討する。

 現場は、砂浜と道路の間に遮る物がない。事故を聞いて駆け付けた協議会会員の米須邦雄さん(63)=大宜味村=は「アオウミガメは砂浜の奧まで上がって産卵する習性がある。上がった場所がたまたま国道だったのかもしれないが、痛ましい事故だ」と話した。

 同じ現場では2011年にもふ化したばかりのタイマイがひかれて死んだことがある。子ガメは街灯に誘われたとみられ、今回のアオウミガメもその可能性があるという。米須さんは「砂浜の出口に丸太を置いたり、街灯の光を工夫したりするだけで事故は防げる」と訴えた。アオウミガメは甲羅の長さが88センチ、体重87・5キロ。事故を起こした車も損傷したという。当時、現場では雨が降っていた。

 北部国道事務所はこれまで、子ガメを道路上に招かないよう、街灯の種類や照らす範囲を調整してきた。「大人のカメが道路上に来ることは想定できなかった。今後、専門家とも相談しながら事故を防ぐ対応を考えたい」としている。

 日本ウミガメ協議会の松沢慶将会長(46)は「国道事務所と海岸を管理する県が連携して対策を取ってほしい」と求めた。

■事故死した母ウミガメの「忘れ形見」 体内から取り出した卵ふ化(2015年10月14日)

 8月に大宜味村の国道58号で車にひかれて死んだアオウミガメの体内から80個の卵が取り出され、このうち16個が人工ふ化した。沖縄美ら島財団(本部町)が13日、発表した。14日夜、事故現場に近い喜如嘉の浜で放流する。

 事故翌日の8月17日、財団の総合研究センターがカメを解剖し、卵を取り出した。卵を温めるふ卵器に入れ、54日後の今月10日からふ化が始まった。ふ化は今後も続く見込みだが、80個のうち、半数ほどは失敗した。

 センターの河津勲博士は「事故の衝撃もあっただろう。死んだ母ガメの卵がふ化した事例は世界的にも確認されていない」と説明する。母ガメの「忘れ形見」の誕生に「とても喜ばしいが、今後はこのような悲劇が起きないように、各地で道路と砂浜を遮る必要がある」と話した。

■子ガメたち、海へ旅立つ…事故死した母ガメに変わり人工ふ化(2015年10月15日)

 交通事故で死んだアオウミガメの卵の人工ふ化が成功し、うち10匹が14日夜、大宜味村喜如嘉の浜で放流された。長さ4センチ余りの子ガメたちは、足をばたつかせながら海に入った。約60人が見送り、「お母さんの分も頑張って生きて」と願った。

 母ガメは8月16日、産卵のため上陸し、浜に近い国道58号で車にひかれた。沖縄美ら島財団(本部町)が持ち帰り、体内から卵80個を取り出してふ卵器で温めていた。この日までにふ化した20匹のうち、準備のできた10匹を放流した。

 事故当日、すぐに駆け付けた日本ウミガメ協議会会員の米須邦雄さん(63)=大宜味村=は「子ガメはたくさん見てきたが、今回は特別。親はもういないけど、最愛の子ガメたちは無事に生きてほしい」と話した。

 美ら島財団の経理課職員、具志堅利枝さん(29)と平良優音さん(27)は、毎日のように総合研究センターのふ卵器をのぞきに行っていたという。「自分がお母さんとして育てたような気分」「元気で感動した」と口々に語った。

 現場は砂浜と道路が直接つながっている。北部国道事務所は事故後の9月、カメを道路に出さないため仮対策として土のうを積んだ。

■子ガメ放流の様子を写した動画はこちらから