政府・与党は、秋の臨時国会を見送る方向で最終調整に入った。行政府として国民に説明すべき重要な案件が山積しているにもかかわらず、政権の一方的な都合で召集を見送るようなことがあってはならない。

 環太平洋連携協定(TPP)をめぐる多国間交渉は、大筋合意に至るまで秘密主義が貫かれ、関係団体にも国民にも知らされなかった。

 国会決議とは異なる合意内容に、全国の農業関係者は不安を募らせており、国会での丁寧な説明が必要だ。

 第3次安倍改造内閣は発足したものの、安倍晋三首相の所信表明演説は行われていない。内閣改造で新たに「1億総活躍担当相」が設置されたが、「突如として登場した概念」(石破茂地方創生担当相)だと閣内から驚きの声が上がるほどで、一体何をする閣僚なのかはっきりしない。

 そもそも「1億総活躍社会」とはどのような社会をイメージしているのだろうか。

 初入閣した島尻安伊子沖縄担当相は2010年7月の参院選直前、自身の顔写真と名前を掲載したカレンダーを配布していたことが明らかになった。公職選挙法は政治家や後援団体が選挙区内で寄付をすることを特定の場合を除いて禁止している。

 本人は違法性を否定しているが、東京地検特捜部は以前、松島みどり法相(当時)の選挙区でのうちわ配布を寄付行為と認定した。

 政府や関係閣僚はこれらの問題について臨時国会で説明責任を果たすべきだ。

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 安倍首相は、集団的自衛権の行使容認に向け、慣例に反して内閣法制局長官の首をすげ替えた。国会では憲法解釈の変更をめぐって「最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではない」と言ってのけた。

 選挙に勝てば首相の一存で憲法解釈が変更できると言わんばかりの答弁であった。

 極めつきは米議会での演説だ。安全保障関連法について、安倍首相は「この夏までに成就させます」と、まるで宗主国に対して語るような口ぶりで米議会に約束してしまった。参院特別委員会での採決は「議場騒然、聴取不能」の状態でなされたものである。これが果たして採決だといえるのか。

 数の力を背景に安倍政権は他の政権に比べ立憲主義軽視、国会軽視、説明責任軽視の姿勢が際立っている。

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 翁長雄志知事は、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。これに対し、防衛省は行政不服審査法に基づいて国土交通相に対し、取り消し処分の効力停止と審査請求を申し立てた。

 国の申し立てを国が審査するわけで、これでは公平性や客観性は保障されない。

 同法は公権力の行使に対し、国民に不服申し立ての道を開き、「国民の権利利益の救済を図る」ことを目的にしている。法律の趣旨を逸脱した手法というほかない。

 行政府の強引な権力行使が何かと目立つのである。