◆私らしく、はたらく(3)吉戸三貴

 ある日突然、上司に呼び出されて、自分には難しすぎると感じる仕事を命じられたら、あなたはどうしますか。私の答えは「私ならできると思ってくれた上司を信じて、まずはやってみる」です。無理だと感じる時こそ成長のチャンス。何かひとつでも心の支えになるものがあれば、ひるまずに挑戦できると思います。

 そんな風に考えるようになったのは、ある出来事がキッカケでした。沖縄美ら海水族館の広報を辞めて、東京のPR会社に転職した時のこと。出社初日に部長から「吉戸ちゃん、今日からPRのプロジェクトリーダーとしてA社(大手広告代理店)に出向ね」と告げられたのです。それは、上京から1日、入社から3時間後の衝撃でした。

 ナニソレ。トウキョウ、コワスギルンデスケド。凍り付く私に、部長は笑顔で付け加えました。「大丈夫。あなたならできるわ」

 そうか、無謀としか思えないけれど、百戦錬磨の上司がそう言うのなら案外できるのかもしれない。美ら海水族館での経験とPRプランナー資格を生かして頑張ってみよう。自分のことは信じられなくても、私を選んでくれた上司のことなら信じられる(たぶん)!

 こうして始まった出向生活は山あり谷あり。最初は、求められる役割と実力に差がありすぎて、とにかく苦しかったのを覚えています。会議の内容が一言も理解できず、「いくら払ってると思ってんの?」とあきれられることもしばしば。それでも必死で働き続けた結果、1年の出向が終わるころには「いつかまた一緒に仕事をしよう」と言ってもらえるようになっていたのです。この経験は、PRの世界で働き続けるためのささやかな自信につながりました。

 感動の成長ストーリー!と言いたいところですが、実は、このエピソードには後日談があります。出向から戻った私に部長が一言。「吉戸ちゃんならできると思ってたわ。すてきなお手紙を書く人に悪い人はいないもの」。評価されていたのは経験でも資格でもなく、転職面接の時に出した、たった1枚のお礼状だったのです。

 そんな理由だったのか…と正直ガッカリしましたが、誰かを信じる気持ちが私を強くしてくれたのは確かです。背伸びが必要なチャンスがやってきたら、自分を信じてくれる「誰か」を信じて挑戦してみませんか。いつもよりちょっぴり頑張れるかもしれません。(コミュニケーションスタイリスト)