在沖米海兵隊は24日、飛行停止を求めた日本側の意向を無視し、渡名喜村に不時着したAH1Z攻撃ヘリコプターの運用を継続した。名護市長選の投開票を2月4日に控える中、各政党から選挙への影響を懸念する声が漏れる。即座に飛行停止を要求した日本政府の対応に、県庁内からは「選挙対策」との冷ややかな見方も広がる。(政経部・大野亨恭、銘苅一哲、東京報道部・大城大輔)

不時着から一夜明け、渡名喜村を離陸後、嘉手納基地に立ち寄ったAH1Z攻撃ヘリからロケット訓練団を降ろす米兵ら=24日、米軍嘉手納基地(読者提供)

◆異例の停止要求

 「米軍に同型機全機の緊急総点検と飛行停止を求めた」。小野寺五典防衛相は24日午前、防衛省で記者団に向け、こう強調した。

 米軍からしてみれば「予防着陸」は事故ではなく、軽微な事案。住民への被害もなく、防衛省が飛行停止まで求めるのは異例だ。

 防衛省関係者は「米軍が簡単に聞くはずもなく、高めのボールとは分かっている。いろいろ議論もあったが、繰り返し指摘しないと変わらないのではないか。いくらなんでも続きすぎる」と一転、強硬姿勢に出た理由を語る。

 素早い対応の背景には、名護市辺野古の新基地建設を左右する名護市長選もある。政府関係者は「米軍は本当にタイミングが悪い」とこぼす。

◆わざわざトラブル?

 「我々が頑張っても米軍の事件や事故で水を差されることがある。選挙期間、米軍は県外で訓練し、静かな沖縄で戦わせてほしい」。公明県本の金城勉代表は、選挙イヤーの幕が開けた1月10日、自民党県連の新春の集いで、こう訴えた。

 名護市長選で自民、公明、維新が推す新人の陣営幹部は「昨年の衆院選直前にはヘリ炎上、一昨年の参院選前には県民が犠牲になった事件があった。米軍がわざと選挙に合わせて事件や事故、トラブルを起こしているのかと思うほどだ」といらだちを隠さない。

 一方、県幹部の一人は「タイミングが悪いのではない」と否定する。「県内では時期を問わず、それだけ多くの事件・事故が起きているということだ」と語り、基地が集中し、負担が重くのしかかる沖縄の現状を訴える。

 新基地建設反対を掲げる「オール沖縄」勢力の政党幹部も県内で相次ぐ不時着事案を念頭に「沖縄全島どこでも事故が起きるということがはっきりした」と指摘。「市民は新基地はいらないという選択をするだろう」と選挙への影響を分析した。

◆対症療法の限界

 この日、米軍は日本政府や県の飛行停止要求を無視し、不時着と同型ヘリの運用を継続した。米軍は「安全な機体しか飛ばさない」と繰り返すが、不時着は頻発。県幹部の一人は「不具合が見つかったらそこだけ直して安全だという。対症療法の繰り返しでは、事故は絶対に減らない」と訴える。

 さらに、県の不信は日本政府にも向く。飛行停止を求めた防衛省の「異例」の対応については「遅きに失した」と切り捨てる。その上で、県庁上空を飛ぶ米軍機の音を聞きながら、こう吐露した。「米軍の一司令官の判断は、日本の大臣の発言を容易に超えている」