雪にはいろんな呼び名がある。「細雪」「ぼたん雪」、歌手イルカさんが歌った「名残雪」。聞き慣れないところでは「不香(ふきょう)の花」。香りのしない花という意味で、空から舞い落ちる雪を花びらに例えた。日本人らしい美意識だ

▼東京都心で23センチが積もった22日の昼下がり。職場の窓の外をふと眺めたら、大粒の雪がちらついていた。思わず空を見上げる。静かに街を白銀に染めていく様は、神秘的ですらある

▼あちこちの道端に雪の塊が残る25日の最低気温は、都心で48年ぶりの氷点下4度。日比谷公園の噴水はつららが下がり、皇居のお堀は氷が張った

▼過去最強クラスの寒気が訪れても、室蘭市出身の知人は「北海道なら3月の暖かい時と同じ」。青森県出身の記者も「冬なら至って普通」と平然としたもの。所変われば、受け止め方も変わる

▼首都圏の大雪は全国ニュースで繰り返し大きく報じられたが、北国の人々にとって、さほど驚く出来事ではない。台風報道も似ている。沖縄で勢力が強い時より、弱まっても本土上陸した方がニュースの扱いは格段に上がる。雪や台風への備えや耐性が分かれ目になっているのだろう

▼雪は豊年の瑞(しるし)-。古くから言い伝えられるように、雪の多さは豊作の前兆とされる。実り多き年になると思えば、記録的な極寒にもありがたみが湧く。(西江昭吾)