大阪府寝屋川市の住宅のプレハブで、柿元愛里さん(33)が監禁され凍死した事件から約1カ月。大阪地検は、父親の泰孝容疑者(55)と母親の由加里容疑者(53)を、監禁と保護責任者遺棄致死の罪で起訴した。

 起訴状によると、両親は共謀の上、2007~17年、娘の愛里さんをプレハブの部屋に監禁。急激にやせ細り衰弱したのに病院を受診させることなく、17年12月に凍死させた。

 地元の小学校に通っていた愛里さんは、小学6年の3学期から出席しなくなった。中学校は一度も登校しないまま卒業しており、社会との接点を断たれた事実上の「監禁」は、20年以上にわたったとみられている。子どもが長期間社会から切り離されているのに、なぜ把握できなかったのか。解明が必要だ。

 小学校の元同級生らは、愛里さんがよく同じ服を着ていたことや、体に傷やあざがあったことを覚えていた。当時の担任に欠席の理由を聞いたが、担任は「事情がある」「そっとしておいて」と説明するだけだったという。

 中学時代の元担任の一人は、家を訪問したり、電話をかけたりしたが、「保護者からどんな回答があったか覚えていない」と話す。隔離状態については「想像もしていなかった」と振り返る。

 愛里さんの中学卒業は20000年で、児童虐待防止法の制定と同じ年。虐待を受けたと思われる児童を発見した場合、全ての国民に通告義務を課す同法下の取り組みは始まったばかりだった。

■    ■

 現在寝屋川市では、子どもが数日続けて休んだ場合は家庭訪問をするように学校に指導している。しかしこうした対応が当時からあったかは分からないという。

 16~17歳ごろの01年には、複数の病院を受診し統合失調症と診断されているが、診断したある医師は「入院を勧めたが、以降は病院に来なかった」と話す。ここでも家庭の異変は見過ごされた。両親の供述によると、プレハブでの監禁は、診察の翌02年から始まっている。

 入院が必要な子どもを入院させないのは虐待の「ネグレクト」にあたるが、医師にそうした認識はなかった。

 両親は診断を基に、月額約8万円の障害年金を申請し、愛里さんが死亡するまで受け取っていた。障害年金の継続受給には定期的な診断が必要なはずで、医療現場や行政で愛里さんの窮状を察知する場面は、少なくとも複数回あった可能性がある。

■    ■

 時に家庭はブラックボックスとなる。家族は子どもの安心安全にとって絶対的な存在ではない。愛里さんの死は、子どもの命を守るには途切れのない「社会の目」が必要なことを改めて浮き彫りにした。

 事件を受けて市教育委員会は、弁護士や精神科医らを交えた「市子どもサポート会議」で再発防止策を話し合う方針だ。子どもにかかわる全ての大人が「目」とならなければならない。同市だけの問題ではないはずだ。再発防止策を公表してほしい。