■第1部 起業家たち チーム「ショーディッチ」(上)

ディスカッションしながらアイデアなどを出し合う森麻紀子さん(左)とザッカリー・W・ベル博士=恩納村・沖縄科学技術大学院大学

新たな商品開発に挑む沖縄科学技術大学院大学の森麻紀子さん(右)とザッカリー・W・ベル博士=恩納村

ディスカッションしながらアイデアなどを出し合う森麻紀子さん(左)とザッカリー・W・ベル博士=恩納村・沖縄科学技術大学院大学 新たな商品開発に挑む沖縄科学技術大学院大学の森麻紀子さん(右)とザッカリー・W・ベル博士=恩納村

 「世界的に活躍する科学者が沖縄で研究している。その知識を生かせば、沖縄から世界中の人々に貢献できる」

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)に勤める森麻紀子さん(40)は、OISTの科学者の技術を事業化する意義を強調する。

 森さんは、OISTで脳神経のメカニズムを研究するザッカリー・W・ベル博士(28)と皮膚から栄養素を取り込む「経皮摂取」のサプリメントを開発するため、年内の起業を目指している。

◆強み生かせば、事業化にチャンス

 きっかけはベル博士のふとした言葉だった。「私の研究でもっと多くの人を幸せにするためには、どうしたらいいだろう」

 ベル博士は、英国のロンドン大学や米国メンフィス大学などで脳神経学と栄養学を修め、栄養素の人体への吸収効率を高める研究を続けてきた。栄養素や薬を体内に取り入れるには、食べたり飲んだりする経口摂取のほかに、シールを直接患部に貼り付けたり、目薬のように点眼するなどさまざまな方法がある。

 ただ、経口摂取以外は、まだ開拓途上の分野で商品化までに費用と時間がかかる。そのため、経皮摂取などは投資を回収しやすい比較的高価な医薬品や美容品などでの活用に限られている。

 ベル博士は「サプリメントなどの健康食品を経皮摂取で体内に吸収することができれば、市場が一気に広がる」と説明する。

 また、健康食品は、医薬品のように安全性や効果を確認する厳しい臨床試験が必要なく、経皮摂取の技術さえあれば、費用や開発期間も抑えられる。「ベンチャー企業の資金でもスピーディーに開発できる。私たちにもチャンスがある」と見通す。

 2人の起業を支援している琉球銀行の小川真司調査役は「誰も考えつかなかった発想で、すぐにでもグローバル展開できる」と評価。ただ、「経皮摂取の技術は他の大手企業も持っている。より効果的に吸収できる成分の選定など、ベル博士の研究をどう生かすかがビジネスを成功させる鍵になる」とみている。

 2人はチーム「shoreditch(ショーディッチ)」を結成。琉銀の協力も得ながら、斬新なビジネスアイデアを売りに投資家からの資金集めに着手。今年中に起業し、2年後には経皮摂取サプリメントを製造、国内外に出荷したい考えだ。

 ベル博士と森さんは「長寿の島として知られている沖縄から、これまでにないサプリメントを作れば、世界中から注目されるはずだ」と期待を込めた。