少子化で労働人口が減る中、働く意欲のある高齢者を継続して雇用する動きが広がっている。

 厚生労働省の「2015年高年齢者の雇用状況」によると、希望すれば65歳以上まで働ける企業の割合は前年より1・5ポイント増え72・5%に上った。70歳以上でも働ける企業は20・1%に達し、初めて2割を超えた。

 県内は全国平均より低く、65歳以上、70歳以上まで働ける企業が、それぞれ68・9%、16・3%だった。

 実際に働く高齢者は総務省の調査で、681万人(14年)と過去最多、11年連続の増加である。就業者総数に占める割合も10・7%と過去最高を記録する。

 シニア世代の働きを後押ししているのは、13年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法である。

 希望者全員を65歳まで雇用するよう義務付けるこの法律は、企業に定年制の廃止や定年の引き上げ、継続雇用制度導入のいずれかの対応を求めるものだ。多くは定年後に再雇用し人件費が抑えられる継続雇用制度を導入したが、中には定年を65歳以上に引き上げたり、定年制そのものを取り払い、高齢者を積極的に活用して成果を上げている会社もある。

 年齢に関係なく、仕事に生きがいを見いだし、明るく元気に働く高齢者が増えることは社会として心強い。

 その高齢者が培ってきた技術や経験、知識が生かされ、経済の活性化につながればなおさらだ。

    ■    ■

 働くシニア世代の増加は、働く年金世代の増加と言い換えることもできる。映し出されるのは、生活のために働かざるを得ない高齢者世帯の窮状である。

 高齢者世帯の平均所得は301万円で、全世帯の529万円を大きく下回っていることが国民生活基礎調査から分かる。高齢者世帯の6割が「生活が苦しい」と答えている。

 そもそも高年齢者雇用安定法の改正は、年金財政の悪化を背景に、厚生年金の受給開始年齢を段階的に65歳に引き上げることに伴うものだった。

 しかし実際は、年金をもらえるようになっても「年金だけでは生活できない」「年金より賃金が主な収入」という高齢者が増えている。

 米軍統治下に置かれ、年金制度への加入が遅れた影響で、低年金者や無年金者が多い沖縄の状況は、さらに深刻だ。 

    ■    ■

 「1億総活躍社会」を看板政策に生涯現役社会を目指す安倍政権。

 女性活躍を掲げた時とも重なるが、少子化で先細る労働力を確保するため、高齢者の活躍が語られることには違和感を覚える。

 社会問題化する非正規労働で目立つのは女性と高齢者。日本の貧困の特徴として挙げられるのは、母子家庭と単身高齢者である。

 政権が取り組むべきは、高齢者が安心して働ける雇用環境の整備、低年金者や無年金者への目配りである。

 高齢者全員の活躍を応援する具体策を語るべきだ。