政府は27日、地方自治法に基づく「代執行」手続きの開始と、行政不服審査法に基づく埋め立て承認取り消し処分の「効力停止」を同時に、セットで打ち出した。

 安倍政権が「敵・味方の論理」と「勝ち負けの発想」に凝り固まり、「知事権限を無力化した」と得意がっているとすれば、それこそ政治の堕落である。

 県民の中に渦巻く政権不信と、強権的手法に対する激しい反発。なぜ自分たちだけこのような目に遭わなければならないのかという不全感と魂の飢餓感は、今やピークに達している。危険な状況だ。

 翁長雄志知事が名護市辺野古沖の埋め立て承認を取り消したことについて、政府は27日、「承認になんら瑕疵(かし)はない」として地方自治法に基づき代執行手続きに着手することを決めた。28日に是正勧告の文書を知事に送付、それに従わない場合、国が裁判を提起する。

 同じ日、石井啓一国土交通相は、埋め立て承認の取り消し処分を執行停止する、と発表した。これによって知事の埋め立て承認取り消し処分の効力は失われる。

 27日夕方のニュース番組で、感想を求められた県内の女性は、驚きと不信感の入り交じった険しい表情で語った。

 「じゃあ、私たちはどうすればいいの」 

 反対してもしょうがないかのように県民のあきらめを誘発するのが国のもう一つの狙いだということは、前日の動きからもあきらかである。

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 政府は26日、名護市辺野古の新基地建設予定地に近い久辺3区(辺野古・豊原・久志)の代表を首相官邸に招き、2015年度から県や名護市を通さず直接、振興費を3区に支出する考えを伝えた。

 県に対してはあらゆる手を使って権限を封じ込め、基地受け入れを表明した3区に対しては財政の支出ルールを変えてまで振興費を支出する。

 メディアを通した印象操作であり、あまりにも露骨な「アメとムチ」の政策である。

 問題はそれだけにとどまらない。

 行政不服審査法は公権力に対して不服を申し立てる制度で、「国民の権利利益の救済」を目的としている。そもそも国に不服申し立てをする資格があるのか。

 防衛省(沖縄防衛局)が行政不服審査法に基づいて国土交通相に審査請求と取り消しの効力停止を求め、国交相はその通りの結論を出す。公平性・客観性を欠いた猿芝居というしかない。

 「手続き上、一般私人と同じ立場」だと沖縄防衛局は主張するが、安保法といい辺野古問題といい、安倍政権には「法の支配」を軽視した行政権力の行使が目立ちすぎる。

 行政不服審査法の運用に当たっては「一私人」であることを強調し、地方自治法に基づく代執行手続きについては、一転して国の立場を堅持する。行政権力の行使があまりにも強引なのである。

 効力停止の決定理由として国交省は「飛行場周辺の住民らが被る危険性が継続するなど重大な損害が生じる」ことを指摘する。いわゆる「一日も早い危険性の除去」論だ。

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 はっきり言おう。長い普天間飛行場の歴史の中で危険性除去に熱心でなかったのは日本政府である。過去に何度か米側から在沖米海兵隊の撤退案が示されたことがあるが、そのつど反対したのは日本政府だ。

 1996年の日米合意からすでに19年もたっているのである。「一日も早い危険性除去」が普天間返還の第一の目的であれば、普天間はとうに返還されていたはずだ。

 安倍晋三首相が仲井真弘多前知事に口約束した「5年以内の運用停止」も雲散霧消してしまった。

 政府が決まり文句のように強調する「唯一の選択肢」論も、海兵隊の分散化が進む現状を反映していない。辺野古移設にこだわる理由は米国の中でも失われつつあるのだ。

 そもそもなぜ、「唯一」だなどといえるのか。辺野古に移さなければ日本の安全保障に致命的な悪影響を与えるとでもいうのだろうか。選択肢なき政策こそが大問題だ。