胸中は、一様ではない。米軍キャンプ・シュワブ(名護市)で新基地建設の本体工事が始まった29日、隣接する辺野古区の住民は「ないほうがいいに決まっているが…」と割り切れない思いを口にした。言葉には計画発表から20年近く振り回された徒労感もにじむ。

新基地建設に向けて本体工事が始まった29日、辺野古区にはいつもと変わらぬ空気が流れていた=名護市

 「新しい基地は最後だと思う。だから賛成する」。60代の女性は、普天間飛行場の危険性除去のため辺野古への移設に理解を示しつつ、こう切り出した。かつて営んだ飲食店は、ドル高の時代に多くの米軍人でにぎわった。本土の人より優しさを感じることもあっただけに親近感もある。「反対しても長引くだけ。20年もゴタゴタしたら、そういう気持ちにもなる。メリットを考えるしかない」

 政府は、埋め立て予定地に近い久辺3区に、振興費3千万円を直接支出する方針も示した。70代の男性は「これで終わりか、それとも始まりなのかが気になる」と話す。振興費は事実上の補償金と考えている。

 新基地完成後にオスプレイが飛べば、騒音問題が起きるのは目に見え、防音機能を備えた自宅の建て替えも望む。「全面賛成の人はいない。地元にしか分からない気持ちもある」。米軍ヘリのプロペラ音が響く中で語った。

 一方で、振興費を疑問視する声も。「もらったら、周りから何を言われるんだろう。そんなものは望んでいない」。洗濯物を干す手を止めて、90代の男性は答えた。

 海で魚介を採って育っただけに、埋め立てにやりきれなさを感じる。だが、国に待ったをかけるのは難しい。ゲート前の抗議活動を見て思う。「もっと、うまくいく方法はないんだろうか」。望んでいるのは、静けさだという。(松崎敏朗)