■第1部 起業家たち チーム「ショーディッチ」(下)

スカイプで英国の科学者と商品開発について議論するベル博士(左)と森さん=読谷村

 「shoreditch(ショーディッチ)」は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)と英国の科学者、東京で活躍するデザイナーなど多彩なメンバーで構成されている。世界を股にかけるメンバーをつなぐのはインターネットだ。

 「この構造だとプロテインはもっと早く水に溶けると思う」「OK。さっそくチャレンジしてみよう」

 1月下旬の深夜、ザッカリー・W・ベル博士と森麻紀子さんがパソコンに向き合い、英国と東京のメンバーと英語で会議をしていた。

 実は、ショーディッチはメンバー全員がそろって顔を合わせたことがない。会議はインターネットのテレビ電話「スカイプ」を使い、メモ共有アプリの「スラック」でも議論を交わす。森さんは「これでほとんどが事足りる。だからこそ、沖縄にいながら短期間で、これだけの優秀なメンバーを集められた」とする。

 本業の傍ら新ビジネスに打ち込むメンバーが自由な時間を使える上、瞬時に情報を共有できるため、作業スピードも速い。メンバーの専門的な知識に加え、インターネットの活用で、昨年10月の結成からわずか4カ月で、事業計画の策定、試作品の開発までこぎつけられた。

 ベル博士は「長寿で知られ、自然豊かな沖縄で、サプリメントなどの健康食品を開発することでブランドイメージが高まる。将来的には、多様で機能性の高い沖縄の素材も活用したい」と沖縄での起業にこだわる。

 アジアとの近さも沖縄にこだわる理由の一つだ。世界水準の技術を武器に、経済成長著しいアジア市場を足掛かりに世界へ打って出る考えだ。

 経皮摂取サプリメントは、軽くて運びやすいことから、発展途上国や被災地などへの支援物資としての活用も見込まれ、市場は国境を越える。

 開発中のプロテインを水に早く溶かす技術は、乳幼児ミルクといったさまざまな製品へも応用でき、可能性はさらに広がる。

 森さんは「沖縄ブランドと高い技術で、アジアから世界へと挑戦を続けたい。より多くの人たちを幸せにする私たちの夢をかなえるには沖縄が最適」とする。

 起業支援のスタートアップカフェコザの中村まこと代表は「社会が抱える課題を最先端技術やアイデアで解決し、市場を一気に拡大するのがベンチャー企業の特徴」と説明。「アジアは経済成長に伴い、社会課題が多く出ている。その社会課題との近さも沖縄の優位性で、ショーディッチにも大きなチャンスがある」とした。(政経部・照屋剛志)