最先端の技術や革新的な発想で市場開拓を目指す起業「スタートアップ」が近年、県内でも耳目を集めるようになっている。起業形態の一つであるスタートアップは、革新的で競争力のあるビジネスプランを生かし、短期間で急成長を達成するものだ。

 東京商工リサーチ沖縄支店によると、2016年の新設法人数は前年比9・2%増の1867社で、09年の調査開始から過去最多を更新した。

 もともと沖縄は開業率が全国に比べ高い。人口の増加や観光客の伸長などから景気拡大が続いており、旺盛な需要を見込んだ起業がここ数年で加速していることが反映されている。

 景気回復や株式市場の高騰が続きながらも、高揚感を欠く日本社会にあって、活発な開業の動きは、沖縄の活力を示すものだ。

 スタートアップの可能性が県内で高まっている背景には、IT(情報技術)の進化や成長著しいアジア新興国に近い地理的特性、アジアの主要都市と那覇空港を結ぶ航空網の充実が進んだことが挙げられる。

 本紙経済面の連載「革新に挑む」では、技術や研究成果を基に、世界も視野に入れた市場開拓を目指す起業家らを取り上げ、彼らを取り巻く沖縄の環境についても検証する。

 登場した研究者は、ITを介して世界にいる共同研究者らとビジネスプランを練り上げ、アジアへの近さも事業拡大の上で利点とみている。沖縄は今、スタートアップの適地となる可能性を秘めている。

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 県内での旗振り役の一人、スタートアップカフェコザの中村まこと代表は、もう一つ沖縄の優位性を挙げる。海に囲まれた島でそこそこの人口規模があることである。イノベーション(革新)の実証の場として適しているという。

 技術を社会の課題解決と組み合わせて生まれるイノベーションは、それがどう機能するかを検証し、成果を積み上げる必要がある。その上で、より大きな社会に投入し、市場を獲得する。

 省エネ、環境負荷の低減、キャッシュレス社会、交通問題…。将来を見据えた社会課題の解決策が、沖縄を経由して世界に広がる。実証の場として適しているとの認知が広まれば、人も知恵も技術も集積するようになる。投資家も沖縄を目指す。

 動きが連鎖して、イノベーションが次々と生まれる「エコシステム(好循環)」を構築できるかが鍵となる。

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 将来性のある起業を生み出し、県経済の活性化につなげようと、金融機関や行政もサポート態勢を整えつつある。新規事業への出資、融資、事業プランの練り上げや、ベンチャーを支援する投資家やパートナー企業とのマッチングなど、支援も多彩だ。

 求められるのは、やはり人材の育成である。社会の将来像を見通し、課題やニーズを発掘できる人、ビジネスアイデアの実現を支える高度なIT技術スタッフ、資本政策を練る教育も必要になる。沖縄の優位性を高める取り組みを前へ進めてもらいたい。