ヒトラーがホロコーストを行ったことは、世界の常識だったはずの2000年、ホロコーストの事実の有無を、しかもイギリスで争うという衝撃の裁判が開廷した。ホロコースト否定論者に、名誉毀損(きそん)で訴えられたユダヤ人歴史学者のデボラは激高。しかし弁護団は、感情論に振り回されることなく、冷静に事実を積み重ねる。そのプロフェッショナルな仕事ぶりは最大の見どころ。

「否定と肯定」

 ホロコーストの悲惨さを描かずして、その残虐性、ヒトラーの脅威とカリスマ性と影響力をじわじわと感じさせ、最後まで集中力を途切れさせない法廷闘争の行方は、観客の喜怒哀楽を自在に操る。

 そして作品が図らずも醸し出してしまう知性は、理論的な男性や、知的な会話を好む、有能すぎてしまう女性たちをも満足させてあまりある上品さと冷静さを備えている。(桜坂劇場・下地久美子)

 ◇桜坂劇場で上映中