児童ポルノや児童買春の調査で来日した国連特別報告者のマオド・ド・ブーア・ブキッキオ氏は記者会見で、日本の子どもの貧困が世界的に見ても深刻な状態にあることを示した。

 欧州評議会事務次長を務めた経験を持ち、性的虐待から児童を守る条約採択などに関わってきたブキッキオ氏。先進7カ国で唯一、児童ポルノ所持を規制していなかった日本でことし7月、改正児童ポルノ法が施行されたことを受け、現状を調査するため10月19日に来日した。

 ブキッキオ氏が今回調査地として選択したのは、東京など3カ所と那覇市だ。沖縄を選んだ理由を「首都の状況だけでは全体を見ることはできない。失業率や貧困率が高い沖縄に関心があった」と説明した。

 8日間の調査を終えて日本記者クラブ(東京)で会見に臨んだブキッキオ氏は「援助交際」「JK(女子高校生の略称)お散歩」と呼ばれる子どもの性を売りにした形態が日本にはいくつもあると指摘した。これらは子どもの性被害と直結しやすく「(日本には)こういった事態を受け入れてしまう社会の寛容性があるのではないか」と語った。

 印象的だったのは、ブキッキオ氏が「子どもの性被害の主要な原因を沖縄で目の当たりにした」と語ったことだ。それは「貧困」と「ジェンダー(社会的性差)不平等」であるという。

 同氏は、子どもの貧困と性被害の関わりの一例として、家族のアルコール乱用が起きたために、いたたまれず家出を繰り返す少女が、生きるため性産業にたどりついた事例を挙げた。

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 ジェンダーとの関係では、沖縄の失業率で、特に女性の失業率が高いことを指摘。そうした状況と沖縄での10代の妊娠・出産の多さが、子どもの貧困につながる「負の連鎖」を生み出しているとした。

 ブキッキオ氏が指摘する妊娠・出産の若年化はここ数年全国でも顕著な傾向を示している。厚生労働省の統計によると19歳以下の出産は1985年1万7877人をピークに2013年は1万2963人に減少したが、同じ時期の14歳以下の出産は23件から51件へ倍増した。15歳以下の人工妊娠中絶も12年度までの5年間で150件増え1476件となった。

 この傾向は、全国で格差・貧困問題が表面化した時期と重なるが、日本では子どもの性被害と貧困問題が関連付けられた個別のケースは散見されても、公的データは現在までに見当たらない。

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 ブキッキオ氏は「(子どもの性被害の撲滅には)根源的な原因究明が必須であり、それは日本政府と沖縄県の共同の責任であると思っている」と強調した。性被害の根底にある貧困問題に目を向けよ、とのメッセージである。

 性被害は、受ける被害の重篤さから「魂の殺人」ともいわれる。子どもの貧困を背景にそうした被害が繰り返されることは、何としても止めなければならない。実態を把握し、「負の連鎖」を断つ施策が急がれる。