【那覇】全国の社会人落語家の夢舞台「社会人落語日本一決定戦」決勝戦(10月4日、大阪)で、大会史上初、全編うちなーぐちバージョンの落語「長短」が口演された。挑戦者300人以上の中から決勝に残ったのは、わずか10人。会場を埋めた観客千人の度肝を抜いたのは、南亭こったいこと玉城智さん(54)=那覇市=だ。大会統括の6代目桂文枝師匠から「言葉が全く分からず、審査の仕様がございません」と評され受賞はならなかったが、「落語を通して、うちなーぐちを普及したかった」と表情は晴れやかだ。(我喜屋あかね)

表情豊かにうちなーぐち版の江戸落語「長短」を披露する南亭こったいさん=那覇市松山「おうちあそび」

 ずっと、表現する場所を探してきた。子どものころは引っ込み思案な性格。しかし大道芸に挑戦し、人前に出る楽しさを知った。20歳を迎え、あてもなく東京へ。劇団で活動したが、体力面や親の介護もあり7年前に沖縄へ戻った。

 会社員として働いたが「何かが違う」と違和感がぬぐえず、1年で辞めた。歩けない母親を介護する日々の中、答えを求めて落語家おきらく亭はち好師匠に弟子入り。落語の世界に飛び込んだ。

 うちなーぐち落語を始めたのはことしに入ってから。沖縄に帰り、若者が話す言葉に違和感があった。「自分らが使っていたものと違い、よそ者のような感じ。若い人たちに衝撃を与えようと思って」。思い切って、上原直彦さんや八木政男さんが主催する芝居塾に入り、一から習得。「長短」のうちなーぐちバージョンを仕上げ、大会に臨んだ。

 決勝当日、トップバッターで高座に上がった南亭こったいさん。「はいさいぐすーよー、ちゅううがなびら。うちなーからゆしびやびたん、南亭こったいなとーやいびん」。琉球節の出ばやしで登場し、自己紹介からスタート。江戸弁でも上方言葉でもない、うちなーぐちで始まる異例の大一番だ。

 自身のうちなーぐちへの思いを枕に、ネタに入った。「うちなーぐちを分かる人が1人もいない状況」だったが、気の長い男と短い男の掛け合いを、所作や表情、声で表し、拍手を浴びた。

 大阪から戻り、那覇市松山のお好み焼き屋で21日に開かれた100円寄席では凱旋(がいせん)公演として同じ演目を披露した。当日を振り返り、「決勝に残れるなんて思わなかったから『えぇー!?』とびっくり。所作とか発声が評価されたのかな」と首をひねる。次は自分の実力を試そうと、正統派の江戸弁での出場を決めている。

 「優勝賞金はまだ言えません。いつか取るつもりでいますんで、今は内緒にしておきます」。にやりと笑った。