翁長雄志知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しを、国土交通相が「効力停止」としたことを不服とし、県は第三者機関である国地方係争処理委員会に審査を申し出た。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐる県と政府の対立は、「知事の承認取り消し→沖縄防衛局が国交相に取り消しの効力停止を申し立て→県が国交相へ反論→国交相が取り消しの効力停止、政府が『代執行』手続き開始→防衛局が本体工事着工→県が係争委へ審査申し立て」と複雑で込み入った経過をたどっている。

 政府が矢継ぎ早に繰り出す対抗措置は、法の趣旨に反した強引な手法が目立ち「権力の濫用(らんよう)」というほかない。

 県が係争委へ審査を申し出たのは、新基地建設を急ぐ防衛省の訴えを、同じ内閣の一員である国交相が判断するのは「公平中立の前提が欠落している」からだ。「利益相反」の疑いが強い。

 防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき「私人」の立場で取り消しの執行停止を求めたことにも、多くの専門家が首をかしげている。米軍基地を建設できる私人などなく、防衛局の主張に基づく決定には疑問を覚える。

 取り消しの効力を止める執行停止と一緒に、取り消しが有効であることを前提とした代執行手続きに入ったことも矛盾する。

 政府がこれほど露骨に公権力を振り回して地方公共団体に襲いかかってきたことが、かつて日本の政治であっただろうか。

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 国と地方自治体の間で法令の運用などをめぐり争いが生じた際に調整を図る係争委は、両者の関係を「上下」から「対等」とした地方分権一括法による改正地方自治法で2000年に設置された。

 係争委での審査は過去15年間で2件と少なく、見通しは立てにくいが「国交相の決定は違法な関与行為だ」と翁長氏が強調するのは、公平性が担保されていないからである。5人の有識者委員には、国の関与について法律に基づいた公正かつ適正な判断を示してもらいたい。

 審査申し出の後の記者会見で翁長氏は「沖縄に対しては何でもありだ」「沖縄にしか基地を置かないという考えが見えて大変残念」と怒りをあらわにした。

 「法治国家」である以上、少なくとも係争委の審査と代執行手続きの結果が出るまで、辺野古での工事を完全に中止すべきである。

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 権力の濫用による弾圧の嵐は、キャンプ・シュワブゲート前で抗議活動を続ける市民にも向けられている。国は警視庁の機動隊を100人規模で沖縄に送り、反対運動の対応にあてる方針だ。

 法を都合のいいように解釈し、外部から機動隊を投入するやり方は、明治政府の琉球処分官が、軍隊と警察を率いて来琉した姿と重なる。

 国家の暴力を行使し何が何でも沖縄に米軍基地を半永久的に押し込めようとする姿勢は、もはや民主国家の安全保障政策とはいえない。政府の基地政策は完全に破綻した。