県は10月から、小学校に入学する前の未就学児を対象に、医療費の「現物給付」(窓口無料化)を導入する方針だ。

 急な病気で手元に現金がなくても病院へ駆け込める窓口無料化は、医療を公平に受ける権利にもつながる重要な施策である。健康格差の是正につなげてもらいたい。

 現行は「自動償還」方式で受診の際、医療費の自己負担分をいったん窓口で支払う必要がある。子ども医療費を公費で負担する助成事業により、未就学児の入院は無料、通院は0~2歳が無料、3~6歳が1医療機関ごと月額千円となっていることから、窓口で支払った分との差額が、後日、指定の口座に振り込まれるシステムだ。

 10月以降、3~6歳の一部負担金も廃止する方向という。

 自動償還方式でも現物給付方式でも最終的な医療費負担は変わらない。しかし子どもの貧困対策としての目線には大きな違いがある。

 窓口で支払うお金がなければ、病院に連れて行くことをためらう受診抑制が起こりがちだ。受診の遅れが、病気をこじらせ重症化させるケースもある。

 県の「沖縄子ども調査」で、小学1年生の保護者に、過去1年間に医療機関に受診させなかった経験を尋ねたところ、12・9%が「ある」と答えていた。

 そのうち1割強が「医療機関で自己負担金を支払うことができなかったため」という経済的理由だった。

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 これまで厚生労働省は現物給付方式に改めた自治体に、国民健康保険の補助金を減らすペナルティーを科してきた。無料化が安易な受診を招き、医療費増加につながるとの懸念からだ。

 必要性を痛感し先行して取り組んできた自治体から「少子化対策に逆行する」との声が上がったのは当然である。批判を受けて国は2018年度から未就学児に限り減額措置の廃止を決めた。

 国の動きが県の決定を後押ししたのだろう。

 ただし全国的には現物給付の自治体が圧倒的に多く、子どもの貧困の深刻さを考えると県の制度変更は遅いくらいである。

 県内では南風原町が他市町村に先駆け、昨年1月、窓口無料化に踏み切った。対象は中学3年生まで。

 実施主体である市町村では県の助成制度に上乗せし、中学卒業まで通院費を援助しているところも多く、負担軽減や窓口無料化の範囲をさらに広げることを求めたい。

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 貧困が健康に及ぼす影響は大きい。

 貧困層とそうでない層の子どもの健康格差は、1~5歳までのぜんそくの通院率で有意差がみられるなど具体的に指摘されている(阿部彩著「子どもの貧困2」)。

 県内では2年前、経済的理由から歯医者さんに通えない子どもの問題がクローズアップされた。 

 受診抑制を強いられる子どもたちを適切な医療サービスにつなげることで、医療費助成制度を効果的に機能させるべきだ。