■第1部 起業家たち リンクアンドビジブル (下)

社内のシステム開発の発表会に出た中国人スタッフに囲まれる豊里さん(前列左から2人目)

 「起業って、もっとカジュアルでいいと思う」。昨年11月に沖縄市の一番街にシステム開発会社「Link and Visible(リンクアンドビジブル)」を設立した豊里健一郎代表(29)は、起業を前向きに捉える。

 高校留学から15年間過ごしてきた中国では、「若い人たちの起業への憧れはとても強かった」。中国では経済成長を追い風にベンチャーが続々と立ち上がり、タクシー配車アプリの「滴滴出行」、スマートフォン製造の「北京小米科技(シャオミ)」など時価総額数兆円とされる企業も誕生している。

 昨年までIT部門の責任者として勤めていた深〓市(注=〓はへんが「土」でつくりが「川」)の日系物流大手では、多くの部下たちが、そこで吸収した技術を生かして独立していった。

 豊里氏も「30歳までに自分で何かをやりたいと考えていた」といい、中国で得た知識とアイデアを生かしたビジネスモデルを練ってきた。

 リンクアンドビジブルの事業ポイントは、日本企業が得意とする「カイゼン(改善)」の見える化だ。日常業務のムラや無駄を一つずつ取り除き、作業効率を引き上げるカイゼン。トヨタ自動車が発祥で、世界にも広まっている。

 豊里氏は「日本人は整理整頓や、ムラや無駄を省くといった業務改善を日ごろから自主的にやっているが、海外では動機づけをしないと従業員は動かない」と説明する。

 新興企業の設立や、海外からの参入が相次ぐ中国では、優秀な人材は独立したり、他社に引き抜かれたりするため、チームワークに重視して従業員に働いてもらう日本企業は、引き留めに苦戦しているという。

 同社は、業務効率を向上させるカイゼンを評価する人事システムを構築。事業に与える貢献度によってポイントを与えて評価を数値化し、給与にも反映しやすくした。

 それぞれの現場で生まれる細かなカイゼンを集約し、全社に周知することで、従業員はどのような業務が求められ、評価に影響するかを理解できる。そうしてモチベーション向上にもつなげ、定着を図る。豊里氏は「海外に進出する日系企業の課題を解決できる」と自信をみせる。

 6月までにシステムの開発を終え、かつて働いた深〓市に拠点を置く日系企業に売り込む。深〓市から営業を広げ、アジア諸国にも展開する考えで、次年度は5億円の売り上げを目指している。

 豊里氏は「沖縄市にはスタートアップカフェコザなどにプログラマーが集まっている。彼らと協力して、システム開発のスピードを上げていく」と意気込む。「メンバーを広げて、一緒に起業を楽しみたい」。(政経部・照屋剛志)