日韓首脳会談は2012年5月以来、実に3年半ぶりである。この間、政府同士の関係も両国の国民感情も、最悪の状態だった。ようやく芽生えた関係改善の機運を大切にし、懸案である従軍慰安婦問題の決着につなげてほしい。

 安倍晋三首相と韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は2日、就任後初めてソウルの青瓦台(大統領府)で正式に会談した。慰安婦問題では、双方の隔たりが大きく具体的な解決策は示されなかったが、早期の妥結をめざし交渉を加速させることで一致した。

 慰安婦問題について日本政府は「1965年の日韓請求権協定で『解決済み』」だとして法的責任を認めない立場に立つ。その姿勢は今も変わっていない。

 これに対し、韓国の盧武鉉(ノムヒョン)政権は05年、「従軍慰安婦らは請求権協定の対象外」と主張。11年8月には、韓国の憲法裁判所が、元慰安婦らの賠償請求に関し、韓国政府が日本と交渉してこなかったのは違憲、との判断を示した。

 今の段階では日韓双方とも譲歩の姿勢を見せていない。譲歩と受け取られるような合意内容だと、国内の反発が避けられず、政権運営にも大きな影響を与えるからだ。しかし、だからと言って、この問題を棚上げしたり、放置し続けることはできない。

 戦時下に性労働を強いられ尊厳を傷つけられた女性たちは現在、かなりの高齢になっている。彼女たちに残された時間は少ない。今年は日韓国交正常化50周年の節目の年でもある。この機会を逃がしてはならない。

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 慰安婦問題をめぐっては、何をもって「解決」とみなすのかという共通認識が確立していない。

 朴氏は自ら進んで妥結案を示すことを慎重に避けているが、日本に対して抗議行動を続ける「韓国挺身隊問題対策協議会(挺隊協)」は、日本政府の公式謝罪と国家賠償、責任者の処罰を求める。

 この問題に対する両国の国民感情を考えれば、決着が容易でないことは誰の目にもあきらかである。

 日本政府としては「いったん妥結したものを蒸し返すようなことがあってはならない。最終決着が必要である」との基本姿勢を堅持する一方、「法的に解決済みでも、人道的見地に立った対応は不可能ではない」(首相同行筋)と予測する。

 被害者が受けた苦痛を心に刻み、被害者の尊厳回復を第一に考えて、当事者が納得できる解決策を見い出してもらいたい。

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 日韓首脳会談に先立って1日、安倍首相、朴大統領、中国の李克強首相による日中韓首脳会談が開かれた。3カ国首脳会談の定例化などを盛り込んだ共同宣言を採択したが、会談の内幕は関係改善にはほど遠いものだった。

 あらためて浮き彫りになったのは、領土問題や歴史問題、安全保障政策をめぐる日本と中韓の対立である。特に日中の相互不信は根深く、共同宣言に盛り込んだ「首脳会談の定例化」が実現する保証はない。信頼醸成への地道な努力の積み重ねが必要だ。