2018年(平成30年) 2月24日

タイムス×クロス 木村草太の憲法の新手

[木村草太の憲法の新手](73)ブラック部活動 強制参加は生徒の自由侵害 子ども目線で見直しを

木村 草太
木村 草太(きむら そうた)
憲法学者/首都大学東京教授  

 1980年横浜市生まれ。2003年東京大学法学部卒業し、同年から同大学法学政治学研究科助手。2006年首都大学東京准教授、16年から教授。法科大学院の講義をまとめた「憲法の急所」(羽鳥書店)は「東京大学生協で最も売れている本」「全法科大学院生必読書」と話題となった。主な著書に「憲法の創造力」(NHK出版新書)「テレビが伝えない憲法の話」(PHP新書)「未完の憲法」(奥平康弘氏と共著、潮出版社)など。
ブログは「木村草太の力戦憲法」http://blog.goo.ne.jp/kimkimlr
ツイッターは@SotaKimura

 1月16日、スポーツ庁は、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン骨子(案)」を示した。そこでは、「適切な運営のための体制整備」、「合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取り組み」、「適切な休養日等の設定」、「生徒のニーズを踏まえたスポーツ環境の整備」、「学校単位で参加する大会等の見直し」の5項目に整理して、都道府県や教育委員会、学校長などが取り組むべき課題が指摘されている。

 「ブラック部活動」という言葉が生まれるほど、学校の部活動についてさまざまな問題が指摘されている。そんな中、スポーツ政策を所管する同庁が部活動健全化に取り組むことは歓迎されるべきだ。

 報道もこうした動きを後押ししている。例えば、朝日新聞掲載の、ダルビッシュ有投手のインタビューでは、「日本の高校野球では、正しい知識を持たない監督やコーチが、自分の成功体験だけに基づいて無理を強いる。そういう側面があると感じます」、「指導者には正しい知識を身に付けて欲しい。例えば休養の重要性です。筋力トレーニングは、ほぼ毎日頑張るよりも、週に3日程度は休みながら行う方が結果は上になったりするのです」と指摘する(朝日新聞デジタル2018年2月1日)。

 ブラック部活動改善については、政治の側からも後押しがありそうだ。というのも、前回の衆議院選挙の際、自民党、公明党、共産党などが、教師の過重負担軽減を選挙公約に掲げていたからだ。

 13年実施のTALIS(Teaching and Learning International Survey 国際教員指導環境調査)によれば、1週間の勤務時間は加盟国平均の38・3時間に対し、日本は53・9時間で最長だった。授業時間は参加国平均と同程度(平均19・3時間に対し、日本は17・7時間)であるが、課外活動(スポーツ・文化活動)の指導時間が特に長いという。教員の過重負担軽減には、部活顧問の見直しが必要だろう。

 ただ、ブラック部活動問題を考える時にはやはり、「子どもの権利」を主軸とするのが筋ではないか。教員が部活に忙殺されているならば、子どもたちも部活で疲れ切っているはずだ。これは、児童の権利条約31条が定める、「休息および余暇についての児童の権利」の侵害だろう。

 もっと言えば、部活参加を強制しているならば、たとえ休養日を設けていようと生徒の自由を侵害しているのであり、それ自体が問題だ。しかし、スポーツ庁が全国の中学校について無作為抽出で実施した調査の集計速報(17年11月17日発表)によれば、公立で3割、私立でも1割強の学校が、生徒に部活動を強制している。

 部活動については、「部活動は非行防止に役立つから強制すべきだ」との意見もある。しかし、「部活動をやらないと子どもは非行に走る」などと考える大人は、子どもに対し異様な不信感を向けていることを自覚すべきだ。そんな大人は、部活動に関わったり、意見を述べたりする資格はない。

 部活動は、本来、楽しい活動で、教師も子どもも自主的に参加したくなるものだ。強制しなければ継続できない部活なら、やめた方がいい。(首都大学東京教授、憲法学者)

「木村草太の憲法の新手」が本になりました

本紙好評連載が待望の単行本化。2015年2月から始まった連載の46回目までを加筆修正して収録。辺野古、安保法制、表現の自由、夫婦別姓など、沖縄/日本の状況を憲法の理論から読み解きます。

■木村草太 著
■四六判/190ページ
■価格 1,200円+税

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