自衛隊が地球的規模で軍事行動する米軍の下請け機関になってしまうのではないか。旧日本軍が暴走した反省から取り入れた文民統制(シビリアンコントロール)がなし崩しにされるのではないか。そんな懸念が拭えない。

 中谷元・防衛相とカーター米国防長官がマレーシアで会談。自衛隊と米軍を平時から一体運用するために安全保障や外交部門など両政府中枢で構成する新機関「同盟調整グループ」を設置、運用開始したことを明らかにした。

 新機関は、4月に改定された日米防衛協力指針(ガイドライン)に明記されている「同盟調整メカニズムの設置」を具体化したものだ。

 新機関全体を「同盟調整メカニズム」と呼び、調整グループの下には、統合幕僚監部と太平洋軍司令部が意思疎通を図る「共同運用調整所」、自衛隊と米軍が陸海空ごとに情報共有する「調整所」が新設された。

 緊急事態への対処方針を定めた「共同計画」を日米の制服組が作ることも決めた。

 軍事的に圧倒的な非対称の関係にある米軍の判断に自衛隊がノーといえるのか。自衛隊が米戦略に組み込まれるのは明らかではないのか。

 安全保障上の秘匿性の高い情報の漏えいを罰する特定秘密保護法がすでに施行されている。共同計画や新機関での協議内容は特定秘密に指定されるはずであり、非公開となるのは間違いないであろう。

 国会や国民の目が届かないところで自衛隊と米軍の共同計画が作られかねない。

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 南シナ海では、中国が岩礁を埋め立て、滑走路を建設している人工島をめぐって米中が激しく対立している。

 安全保障関連法案を審議中の8月、共産党が国会で暴露した統合幕僚監部の内部資料「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)及(およ)び平和安全法制関連法案について」には、南シナ海での平時からの具体的な協力として情報収集や警戒監視、偵察などを挙げ「今後、ワーキンググループなどを活用し、関与のあり方について検討していく」と明記している。自衛隊は南シナ海ですでに米軍との連携を想定しているのだ。内部資料からは幅広い対米協力を検討していることが浮かび上がる。

 米太平洋軍のハリス司令官も6月、海上自衛隊のP3C哨戒機が南シナ海で哨戒活動することを「歓迎する」と期待感を表明した。

 自衛隊が中東の過激派組織「イスラム国」を攻撃する米軍の後方支援に回ることも法制上は可能だ。

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 防衛省内局の背広組(文官)と制服組(自衛官)が対等の立場で防衛相を補佐することを盛り込んだ改正防衛省設置法が6月に成立、10月から実施されている。背広組が制服組に優位な「文官統制」は文民統制につながる制度だったが、全廃された。

 改正法には自衛隊の作戦を制服組主体に改める「運用一元化」も入っている。自衛隊の存在感が増す一方で、同盟調整メカニズムでは米軍が事実上の指揮権を握り、自衛隊はその指揮下に組み込まれてしまわないか危惧する。