中台関係はストレートに沖縄に影響する。冷戦時代もそうだったし、今もそうだ。来年1月に実施される総統選挙の結果にかかわらず、中台の関係改善が進み、台湾海峡の平和が持続するよう期待したい。

 中国の習近平国家主席と台湾の馬英九総統が7日、シンガポールで会談した。中台首脳会談が実現するのは、1949年の分断後、初めてである。

 両首脳は、対等な関係を演出するため肩書きを使わず「先生」と呼び合い、台湾海峡の平和と発展の重要性を確認した。

 台湾の与党国民党と中国共産党は互いに相手の主権を認めず、自らが唯一の合法政府である、との立場に立つ。

 会談では、お互いが「一つの中国」の原則を認め合いつつ、その解釈はそれぞれにゆだねる-とした「92年合意」をあらためて確認した。

 それが対話継続の前提条件ということなのだろう。しかし、台湾独立を志向する最大野党の民主進歩党(民進党)は、合意の存在自体を認めていない。

 来年1月に実施される総統選挙は、民進党主席の蔡英文氏が対立候補を大きくリードし、政権交代の可能性が高いといわれる。首脳会談の開催に民進党をけん制する狙いがあるのはあきらかである。

 1996年3月、中国は、中国と距離を置く国民党の李登輝総統の出馬をけん制するため、台湾近海でミサイル発射訓練を実施した。あのときも総統選挙の前だった。

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 習主席は首脳会談で、台湾独立に断固反対する、との立場をあらためて強調した。

 首脳会談を開くことでこれを既成事実化し、次期政権もこの路線を踏襲してもらう。選挙後も、「92年合意」を前提にして対話を重ね、さまざまな分野で両岸関係を深めていく-それが首脳会談に託した中国側の狙いだったのではないか。

 2008年に誕生した馬政権は、中国との関係改善を進め、中台間の経済交流を拡大した。中台関係を安定軌道に乗せたのは間違いない。

 その一方で、馬氏の親中政策が世論の反発を招いたことも確かだ。昨年、学生らが立法院(国会)を占拠した「ヒマワリ学生運動」は、民主化が進まない中国の現状に対する台湾住民の不信感の表れでもあった。

 中国は、軍事的にも経済的にも米国と並ぶ大国になったが、台湾住民が統一を主体的に選択するほどその心をつかんでいるわけではない。

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 中国に足りないものは、国際社会から信頼されるような「ソフトパワー」である。近隣諸国の警戒心を解くための行動を進めなければ、中国は「傍若無人の大国」とのレッテルをはられかねない。

 日本政府も中国に対する警戒心やむき出しの対抗意識が前面に出過ぎる。中国包囲網を築くために台湾を取り込むという冷戦型の対応が目立つのである。

 日中韓台の東アジアで露出する「権力政治」と「歴史問題」を克服することなしにこの地域の将来像は描けない。