「子育て中のママへ」「夢を持っている人へ」-。見知らぬ誰かを思った手書きの宛名から、温かみがにじむ。名護市宮里のブックカフェ「AETHER(アイテール)」は半年前の開店以来、客が今後来店する見知らぬ誰かにコーヒーをごちそうできる「恩送りカード」を取り入れている。会員制交流サイト(SNS)や口コミで話題が広がり、カードの利用者は今月で120人を超えた。思いのこもった1杯が多くの客の心を温めている。(社会部・松田麗香)

(左から)オーナーの下田直人さん、店長の西尾友宏さん、常連客の逸見愛美さん=名護市宮里・ブックカフェAETHER

「子育て中のママへ」など、応援の思いを込めたカードが店内に並ぶ

(左から)オーナーの下田直人さん、店長の西尾友宏さん、常連客の逸見愛美さん=名護市宮里・ブックカフェAETHER 「子育て中のママへ」など、応援の思いを込めたカードが店内に並ぶ

 「恩送り」とは、誰かから受けた恩を直接相手に返すのではなく、別の誰かに感謝の気持ちを表すことで善意の連鎖を生もうという取り組み。アイテールの「恩送りカード」は、どんな人にごちそうしたいか対象者を決めて宛名に書き、来店した人が条件に当てはまれば、カードを利用して無料でコーヒーなどが楽しめる仕組み。現在、店内には約50枚のカードが並んでいる。

 オーナーの下田直人さん(43)は2017年7月「時間や空間を超えて人と人をつなぐ場所をつくりたい」と出店。海外のファストフード店などで、後から来店する人に食事や飲み物を贈る運動が話題になっていたことが頭の片隅にあり、自分の店にも取り入れた。

 カードは1枚500円で販売。利用して無料のコーヒーを飲んだ人はお礼のメッセージを書き、それを店のスタッフが提供した客に郵送し、つないでいる。

 常連客の逸見(へんみ)愛美(めぐみ)さん(21)は初めて来店した時、「誰かを応援している人へ」という宛名のカードを使ってコーヒーを飲んだ。自分も「これから海外へ飛び立つ人へ」とカードを書くと数週間後、自宅にお礼のメッセージが届いた。「想像以上にうれしかった。あれほどわくわくした気持ちは久々だった」と喜ぶ。

 「誰かの気持ちがこもっていると感じることで、単なるコーヒーが意味のある1杯になる。人と人がつながり物語が生まれる」と反響を喜ぶ下田さん。「優しさを感じることで小さな善意が広がったり、出会いが生まれたりすれば」と期待している。

 カードを利用して恩を受け取った人も、これから恩を贈ろうと宛名を考えている人も「皆優しい顔になるのがうれしい」と話した。

恩送りカードを導入した(左から)オーナーの下田直人さん、店長の西尾友宏さん、常連客の逸見愛美さん=名護市宮里・ブックカフェAETHER

「子育て中のママへ」など、応援の思いを込めたカードが店内に並ぶ

 定休日は毎週木曜と毎月第1、3水曜日。問い合わせは同店、電話0980(43)9093。