本土復帰前の沖縄で起きた米兵殺傷事件を描いたノンフィクション「逆転」で知られる作家の伊佐千尋(いさ・ちひろ)さんが3日午前3時10分、前立腺がんのため横浜市中区の自宅で死去した。88歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は妻邦子(くにこ)さん。

伊佐千尋さん

 県立二中(那覇高校)卒業。1964年、米軍統治下の沖縄で起きた米兵殺傷事件の裁判で陪審員となり、被告の沖縄青年4人に無罪評決を出した。事件を描いた「逆転」で78年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したが、実名で登場させた元被告の男性から「プライバシーを侵害された」と訴えられ敗訴した。70年12月のコザ騒動を描いた「炎上」も発表した。

 日本の司法制度に関心を抱き続け、「司法の犯罪」「島田事件」などの著作を発表。陪審員制度導入に尽力した。

 北谷町の生涯学習プラザ元館長の今郁義さん(71)は「私が沖縄市平和文化振興課長だった時、コザ騒動の資料集を発行した。コザ騒動の調査や検証をする上で『炎上』は外せない本。沖縄で起きた事件・事故を題材に、戦後を描いてきた作家はほかにいないと思う。とても残念だ」と話した。