石井啓一国土交通相は9日、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事に対し、地方自治法第245条に基づき、取り消し撤回を指示する文書を発送した。勧告を拒否した知事に代わって国が埋め立てを承認する「代執行」手続きを、さらに進める措置である。

 日米で合意された米軍普天間飛行場の辺野古移設が進まなければ、周辺住民の危険性は除去されず、米国との信頼関係にも悪影響が及ぶとし、「取り消し処分を放置することにより、著しく公益を害することは明らかだ」と主張している。

 その言い分は、基地をめぐる歴史的経緯を何一つ考慮しない一方的な決め付けである。そもそも著しく公益を害するようなことをしてきたのはどっちなのか。

 この70年間、沖縄は地上戦で甚大な被害を受け、戦後は日本の主権回復と引き換えに米軍支配下に置かれ、「無主権状態」の下で土地接収と基地建設が強行された。復帰後も米軍専用施設の約74%が集中し、日米地位協定により基地は実質的に自由使用されてきた。

 つい最近も、普天間所属のオスプレイ訓練の佐賀空港移転が地元の反対で白紙に戻されたのに、沖縄では反対の民意を無視し警視庁の機動隊を投入して、工事が強行されている。

 本土が嫌がるからとの理由で、沖縄に米軍基地を押し付ける差別的政策は既に破綻しており、問われるべきは政府の品格だ。

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 2012年、在日米軍再編見直しに伴い、在沖海兵隊の一部を山口県の岩国基地に移したいという米側の打診を拒否したのは日本側だった。政府は山口県と岩国市の強い反発に困難と判断した。

 海兵隊の撤退論が浮上するたびに、日本政府がブレーキをかけ、沖縄に引き留めてきたのである。

 海兵隊の配備先について「軍事的には日本国内であればよい。政治的にできないから官僚が道をふさいでいるだけ」と説明したのは森本敏元防衛相だ。ジョセフ・ナイ元米国防次官補は「中国の弾道ミサイルの発達で在沖米軍基地の脆弱(ぜいじゃく)性が高まっている」と、沖縄に基地が集中することのリスクを指摘した。

 日本の安全保障政策を支えてきたのは、米国に対する過度の従属的姿勢と、沖縄に基地を押し込める構造的差別である。米軍基地の存在によって沖縄の地方自治・人権は脅かされ、地域の公益は著しく損なわれている。

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 今回の代執行手続きと行政不服審査法に基づく取り消しの執行停止に対し、県が出した公開質問状に国交相はまだ答えていない。説明責任を果たさないのは不誠実である。

 政府は口を開けば、普天間の危険性除去を強調するが、危険性除去を本当に急ぎたいのであれば、別の方法が早道だ。政府が主張する「危険性除去」も「負担軽減」もいずれも中途半端で、ヘリ基地を沖縄に半永久的に固定化する道を開くものである。

 それを負担軽減とは呼ばない。