ミャンマーの有権者が選んだのは「変革」だった-。

 2011年に軍政から民政に移管して以降初めてとなるミャンマーの総選挙は、アウン・サン・スー・チー氏(70)率いる野党・国民民主連盟(NLD)が圧勝し、国会の第1党となる公算が大きくなった。

 全選挙区の結果が確定するまでには約2週間かかるといわれているが、国内外のメディアは、政権獲得の可能性が高まった、と報じている。

 上下両院の二院制を採る国会の議席は計664議席。このうち、4分の1に当たる166議席は国軍最高司令官が任命する軍人枠となっており、残る498議席の民選枠が争われた。

 テイン・セイン政権が発足し民政に移管するまで、ミャンマーは約50年にわたって軍政が続いた。1990年の総選挙ではNLDが8割の議席を得たものの、軍事政権は結果を無視して政権に居座り続けた。

 スー・チー氏のNLDが民選枠の3分の2超を制し、軍人枠を含む議席全体の過半数を獲得すれば、歴史的な政権交代が実現することになる。

 軍事政権の流れをくむ与党・連邦団結発展党(USDP)は民政移管後、政治・経済の両面で民主化改革を進め、国内外からそれなりの評価を得ていた。今回の結果は、軍に対する国民の不信感がいかに根深いかを物語る。

 軍人枠の存在が象徴するように、国軍の政治への影響力は依然として大きい。選挙後の国軍の対応も注目されるところだ。

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 「建国の英雄」を父に持つスー・チー氏は88年、英国から帰国し、母国の民主化運動に身を投じた。軍政期に長期にわたって自宅軟禁され、政治活動を封じられたことはあまりにも有名である。 民主化運動のシンボルとして、その知名度は世界的にも群を抜いている。

 ただし、スー・チー氏は、NLDが政権を獲得しても念願の大統領にはなれない。外国籍の配偶者や子供がいると大統領になれないという憲法の条項があるからだ。

 NLDが憲法改正に踏み込めば、国軍との摩擦は避けられない。半面、国軍に妥協しすぎると、民主化を期待した民衆の不満が高まることも予想される。

 スー・チー氏は、NLDが政権を握れば「大統領の上に立つ」と公言したという。耳を疑うような発言だ。

 仮に政権交代が実現しても、国づくりの産みの苦しみは続きそうだ。

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 ミャンマーのこれからの政治を占う上で重要なポイントになるのは、新政権と国軍との関係、スー・チー氏のNLDにおける地位、NLDの勝利をもたらした国民の動向などだろう。

 多くの専門家が指摘するもう一つの重要な要素は、50とも100ともいわれる少数民族の存在である。

 ミャンマーは国民の大多数が仏教徒である。イスラム系の少数民族ロヒンギャ族や、土着信仰を重んじるカレン族が迫害を受けているといわれる。さまざまな政治勢力の国民的和解が求められる。