30代で気鋭の写真家の石川直樹さんと石川竜一さんの対談。自然の中で撮ること、沖縄で撮ることについて意見を交わした。

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 直樹 竜一君は後輩に厳しく指導すると聞いた(笑)。

 竜一 厳しいつもりはないです。ただ、「『やる』と言ったら、やれ」。後輩といっても学生や卒業したばかりで仕事したことがない人がほとんどだから。といっても僕も社会に出たことはほとんどないですけれど(笑)。

 直樹 俺もないけれど(笑)。沖国大の写真部に指導したりしないの。

 竜一 駄目です。僕が本当にばかでめちゃくちゃ、やったんで出入り禁止です。

 直樹 そういうエネルギーはどこから来るの?

 竜一 社会や物事に、諦めとかがあった。落ち込んでいた時期に死にきれなかった自分がいて。死にきれないなら、やりたいことやるぞ、とやりたい放題になって。

 直樹 今は落ち込んだりしないの?

 竜一 そんなにないです。結構楽しくしている。それこそ、直樹さんのつながりで紹介してもらった服部文祥さんとの山登りは楽しかった。

■山中で撮る

 直樹 「サバイバル登山」で有名な服部さんは国内でもまれなハードな登山をしている。寝袋は持ってもテントは持たない。必要最小限の道具で猟をしながら山に分け入る。竜一君、よくついていけたね。

 竜一 犀(さい)滝(石川県)を目指して周りの山をいくつか越えていく3泊の旅と、秋田の山の5泊。最初は本当にびびって怖くて体力を奪われたけれど、気持ちが落ち着いていくと、楽しかった。命の捉え方というか、いつ死んでもしょうがないという気持ちでないと山は登れないと思う。写真も一緒で、何か一つの物事をやるということは同じこと。服部さんと一緒に話していて楽しかったけれど、ぶっ壊れた人だなあと思った。直樹さんもそういう部分があるんだろうなと思うけど。

 直樹 街中と違って、ヒマラヤでは思考がぶっ飛んでいる。竜一君、街の雑踏だったらいろんな人に声を掛けて撮れるけれど、誰もいない山の中で撮り方は変わった?

 竜一 普段撮っている人がいない(笑)。街中では疲れたら座って休めば、周りが勝手に動いていく。山は何も動かない。気になったのをバシャバシャバシャバシャ、何でも撮った。三脚立てたり、手持ちでブレたり、ブレないように撮ったり、ひいてみたり。ひたすらやり続けて、プリントしたものを見たら、感覚的に街中で撮る写真と変わっていなかった。俺、何撮ってもこういうのが出てくるんだなと。ただ自分にとらわれている感じがある。自分をバラしてみたい、とも思う。

■沖縄に住む

 竜一 直樹さんは山や祭祀(さいし)を撮影しているけれど、その中間の現代の生活のようなものは撮っていますか。

 直樹 撮っているけど、まとめようがない。昨年、「髪」という女の子の髪だけ写した写真集を出した。それも驚きから。形にはまらず作品を生み出していこうという気持ちは竜一君もあるでしょ。

 竜一 もちろんです。常に不安定でいたい。

 直樹 俺も同じで、自分の言葉で言えば、常に変幻自在でありたいな、と。

 竜一 来年から沖縄に住むんですよね。どうなっていくか気になります。

 直樹 1年ぐらい滞在したい。沖縄が好きだと言っちゃうと、すごく気恥ずかしくなってしまうけれど、雰囲気や人の感じを含めて好きとしか言いようがない。フォトネシアの活動にもっと取り組みたいし、東松照明さんの写真うんぬん以上に、フォトセンターを沖縄に作るという考えはすごいことだ。

 この夏、最後の目標だった世界で一番難しい山と言われているK2(パキスタンと中国国境)に行った。結局登れなかったけれど、頂上近くまで行くことはできた。世界中行きたいところはほとんど行ったし、本もたくさん出せるようになった。何か伝える、ことに重きを置いてみようかな、と今は思っている。

 竜一 沖縄に住めば、お盆や正月とか生活や祭りの延長も撮れますね。