パリで無差別テロが引き起こされ、週末の夜を楽しんでいた多数の市民らが犠牲になった。何の罪もない人たちである。卑劣極まりない蛮行であり、断じて許せない。

 13日夜(日本時間14日早朝)のほぼ同時刻に、パリ市内やその近郊で銃乱射や自爆テロとみられる爆発が起きた。

 ロックコンサートが開かれていた劇場、レストランやカフェ、仏独の親善試合が行われていたサッカー場など計六つの現場で市民が標的にされた。不特定多数の人が気軽に集まり、警備や監視が手薄になる「ソフトターゲット」と呼ばれる所ばかりである。

 検察当局によると、死者129人、負傷者352人に上り、容疑者7人が死亡した。フランスで「戦後最悪のテロ」(地元メディア)だ。

 容疑者らは3班編成で分刻みで実行しており、計画的犯行をうかがわせる。当初死亡した実行犯は8人と報じられたが、逃走者がいる可能性がある。犯行に使われた車はベルギー在住のフランス人が提供していたことが分かり、3人が拘束された。容疑者は広がる様相をみせている。

 オランド大統領は非常事態を宣言、国境閉鎖を明らかにした。緊急テレビ演説で「国外で用意周到に準備された戦争行為だ」と非難した。

 インターネット上で犯行を認める声明を出したのは「イスラム国」である。イラクとシリアを拠点に、2014年、シリア北部「ラッカ」を「首都」とする政教一致国家の樹立を一方的に宣言した。

 「イスラム国」は声明で、フランスが9月からシリアなどで「イスラム国」空爆を始めたことに対する報復テロと言っている。

    ■    ■

 だが、空爆をしているのはフランスだけではない。現時点では不明な点が多く、フランス当局は、治安の回復に努めるとともに、背景に何があるのか、全容解明に全力を挙げてもらいたい。

 フランスは人口約6500万人のうち10%程度がイスラム教徒とされる。貧困や格差が大きく差別や偏見に対する若者の不満が過激思想に向かわせるとの指摘がある。

 フランスでは「イスラム国」とは別の過激派が1月、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載したパリの週刊紙本社を銃撃するなどして17人が死亡している。

 イスラム社会と過激派を混同してはならないのは当然だ。テロを生み、育てる土壌を改めない限り、暴力の連鎖を断ち切ることはできない。

    ■    ■

 「イスラム国」が1月、邦人2人を拘束し、高額の身代金を要求した上に殺害した事件は忘れもしない。

 「イスラム国」は日本を欧米連合に連なるとみている。安全保障関連法の成立で、自衛隊が「イスラム国」を攻撃する米軍の後方支援に回ることもあり得る。日本も、対岸の火事ではなくなったのだ。

 日本では来年5月に主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)、20年には東京五輪が開かれるなど国際的なビッグイベントが控える。

 国際社会は冷静さを失わず、新しい脅威に対し連携を強める必要がある。