【小橋川慧通信員】「45歳プラス」を対象にしたライフスタイル・エキスポが10月31日から2日間、トロント内のエキシビション・センターで開催された。最大のエリア「健康と活力」の55のブースの一つに、トロント沖縄県人会会員のエルジスリ(旧姓田港)知江子さん=羽地出身=が自著「(認知症)患者の視点」と日本の「産業技術総合研究所」が開発した癒やし系アザラシ・ロボット・パロちゃんをそろえて、夫と2人の友人ともども熱心に客の質問に対応していた。

知江子さんのブースの様子。(左から)夫のリアド・エルジスリさん、知江子さんと2人の友人

 会場は七つのエリア(ペット、娯楽、旅行など)に分けられ、各エリアには新商品などが陳列されたブースや数人の講演者を配置。入場者は3万5千人以上で盛会だった。

 知江子さんは短大卒業後、アルバイトをしていた喫茶店で沖縄在の貿易商社勤務中のリアド・エルジスリさんに出会い、1978年に結婚。その後1年間リアドさんの故郷で、内戦中のレバノンで暮らし、80年に来加してトロントに居を構えた。

 60歳の時、職場が閉鎖になり知江子さんは失業。第二の人生の職を求め、政府の援助を得てカレッジに入学、コミュニティーサービスワーカー(CSW)の資格を取得したが無職の状態は続いた。

 以前から自分の体験を本にしたいと思っていた知江子さんは、ある出版社の出版についての集中講義を受けた。受講中、出版社の社長から「仕事に関する本を書いてはどうか」と勧められ、CSW資格習得のために老人ホームで認知症患者の世話をした時の体験を書くことにした。

 知江子さんは実習中、患者と介護者との間に頻繁に起こる葛藤にまず驚いた。「この摩擦をどうすれば軽減できるか」について書いたものが、夫や出版社のサポート、知江子さんの強い意志もあって英語版「患者の視点」の出版になった。

 20人の個人差のある患者との「接点」を見いだしていくプロセスが分かりやすく記述されている。最後には介護者の黄金律「思いやり-笑顔と優しい言葉」「尊敬-プライドを傷つけない」「尊厳-人間性を無視しない」「忍耐-気持ちに添えるよう根気良く」「優しい触れあい-手を握ってあげるなど」を挙げている。

 知江子さんが今回出展した目的は、本の販売もさることながら、認知症に対する一般の関心度を知り、将来の仕事の可能性を探るためだったという。いろいろな組織とつながり、認知症についてのワークショップなどの実現性について予想以上の感触があり、希望を持つことになった。セカンド・キャリアについて「これからも頑張っていきたい」と知江子さんは熱を込めて話した。