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  • ダウン症の子どもたちにダンスを教える牧野アンナさんが本を出版
  • 明るく前向きな姿に感動、教えることの原点を思い出したという
  • 今では全国に会員700人。「この子たちの素晴らしさを伝えたい」

 ダンスインストラクターで、ダウン症の人たちのためのダンススクール「LOVE JUNX(ラブジャンクス)」代表の牧野アンナさん(43)が10月、「ダンスチームLOVE JUNX ダウン症のある子たちと共に」を出版した。ダウン症の子と歩んできた活動をつづった牧野さんは「ダウン症の子の素晴らしさや可能性を伝えたい」と、本出版の動機を話した。(湧田ちひろ)

ダウン症の子たちにダンスを指導し、公演などの活動をけん引する牧野アンナさん=那覇市・沖縄タイムス社

「沖縄ラブジャンクス」の公演でダンスを披露し、会場を沸かせたメンバー=6月21日、那覇市

ダウン症の子たちにダンスを指導し、公演などの活動をけん引する牧野アンナさん=那覇市・沖縄タイムス社 「沖縄ラブジャンクス」の公演でダンスを披露し、会場を沸かせたメンバー=6月21日、那覇市

 牧野さんは安室奈美恵やMAXなどを生み出した沖縄アクターズスクールの元講師。講師だった2001年、日本ダウン症協会からダウン症の子たちのダンスレッスンを依頼されたことが、ダウン症の人のためのスクールを開くきっかけとなった。

 「レッスンをすると誰も私の話を聞かないし、みんな楽しんで一緒に踊りだす。それがとても衝撃的だった。まず、この子たちの信頼を勝ち得なければと一生懸命やっているうちに、教えることの原点を思い出すことができた」

 牧野さんはその後アクターズスクールを辞めて、02年10月、ダウン症の人のためのダンススクールを東京と横浜で始めた。

 「ダウン症の子の親御さんに聞くと、最初は不安があって一緒に死のうと思ったという人もいた。でも、育てていく中で皆さん『この子が生まれてよかった』とおっしゃっていた。ダウン症の子はおもしろくて、ポジティブで、かわいくて魅力的。なのに社会では障がいに暗いイメージがある。この子たちがどんなに素晴らしいか知ってもらうためにも活動しようと思った」

 レッスンで生徒たちは、左右の簡単なステップでも覚えるのに1カ月以上かかった。長期戦だが、着実に一つずつできるようになっていった。

 「一つずつ成功体験が彼らの自信になっていった。活動で一番大きかったのは、メールをしたり、みんなと話し合ったり、好きなことを共にできる友達ができたこと」と意義を語る。

 報道などで全国的にも活動が知られるようになった。ダンスをする若者が手伝いを買って出たり、同様の教室を開いたりする人も出てきた。関西や沖縄でもレッスンを開始。現在、全国の会員は約700人に上る。牧野さんは「ダウン症の子たちの明るい姿やイメージが伝わる機会が増えたらいい」と願っている。

 一方、妊婦への血液検査で染色体異常を調べる出生前診断に、複雑な思いも抱く。「医学の進歩とともに、そういった子どもたちが淘汰(とうた)されてしまう可能性がある。もちろん、いろんな環境の中でいろんな考え方がある。ただ、ダウン症の子が普段どのように生活をして、将来をどのように歩んでいるか、可能性について知ってほしい。活動がそのきっかけにもなれたら」と話す。

 現在の目標は活動を続けていくことだ。「生徒の夢をかなえるのが私の夢でもある。プロのダンサーやアイドルになりたいとか、みんな夢を持っている。一人でもいいので、その夢をかなえたい」と笑顔を浮かべた。

 12月13日午後6時から、北中城村のイオンモール沖縄ライカムで出版記念イベントがある。