国と県が基地問題をめぐって再び、法廷で争う。他県ではおよそ考えられない異常な事態である。

 名護市辺野古の新基地建設で、翁長雄志知事が埋め立て承認を取り消したことに対し、政府は17日、知事の取り消し処分を取り消すための代執行を求め、福岡高裁那覇支部に提訴する。

 「承認の取り消しを放置すれば、著しく公益を害する」というのが提訴の理由だ。

 未契約米軍用地の強制使用問題で土地調書・物件調書への署名押印を拒否した大田昌秀知事に対し、村山富市首相が職務執行命令訴訟を提起したのは1995年12月のことである。あれから20年。基地問題をめぐって国が県を訴えるという基本的な構図は、今回も変わらない。

 なぜ、このような事態が沖縄で相次ぐのか。

 本来、復帰の際に処理すべきであった基地をめぐる諸問題が、復帰後も未解決のまま残った。「本土並み」という言葉は、こと基地政策に関して言えば、言葉のまやかしであった。

 裁かれるべきは国の理不尽な基地政策である。

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 復帰の際、政府は安保条約と地位協定が沖縄にも適用されることを強調し、「本土並み」の返還だと喧伝(けんでん)した。事実上の軍事植民地といわれた沖縄には確かに、安保も地位協定も適用されていなかった。

 だが、ここには県民さえ気づかない大きな「落とし穴」があった。米国が返還交渉で最後まで求め続けたのは、復帰前と同じ「基地の自由使用」であった。

 政府は米側の要求を受け入れた。あの膨大な基地群が復帰後も維持され、部隊の運用や基地の排他的管理、事件事故の処理など、あらゆる局面で地位協定が適用されることになった。

 このことは、復帰によって獲得したはずの憲法と国内法に基づく主権が、地位協定に阻まれ、著しい制約を受けることを意味する。

 地位協定と関連取り決めの束が、どれほど憲法・国内法をがんじがらめにし、地方自治や特に女性の人権を脅かしてきたか。本土からはその実相が見えにくい。

 米兵による暴行事件や沖縄国際大学へのヘリ墜落事故などが起きたとき、米軍優先の屈辱的な日米合意が白日の下にさらされ、県民の激しい反発を招いた。

 政府は今も、米国に対して卑屈なほど従属的である。

 主権を回復したはずの日本政府にとって、この現実は国民に見せたくない「不都合な真実」だ。不意の来客にあわてて、汚れ物を押し入れに隠すように、基地を沖縄に押し込め、「不都合な真実」を見えにくくしているのである。 だが、このような理不尽な基地政策はもう限界だ。

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 政府は、契約に応じない地主の土地を復帰後も継続して使用するため、復帰前年の71年、公用地暫定使用法を制定した。返還を求める地主の主張は受け入れられず、未契約地の5年の強制使用が認められたのである。

 沖縄だけに適用される法律であるにもかかわらず、憲法で定められた住民投票は実施されなかった。

 5年後の77年になっても多くの未契約地主が残ったため、政府は沖縄の地籍明確化と未契約地の強制使用を抱き合わせた「木に竹をついだ」ような地籍確定法案を国会に提出した。

 同法案は公用地法の期限が切れる5月15日になっても成立せず、18日に可決されるまでの間、「法的な空白」が生じてしまった。

 大田元知事が代理署名を拒否したときも、強制使用の裁決手続きが間に合わず、読谷村の楚辺通信所(象のオリ)で不法占拠状態が起きている。

 政府のなりふり構わない基地維持政策は、安倍政権になって一気にエスカレートしてきた。行政不服審査制度の乱用に象徴される法制度の強引な解釈。警視庁機動隊の投入に象徴される辺野古現地での強権的な警備。政府は一体、いつまで理不尽な基地政策を続けるつもりか。

 工事を強行すれば公益は著しく損なわれるだろう。