◆私らしく、はたらく(6)吉戸三貴

 「吉戸さんを敵に回すとこわいなぁ」。ミスをした取引先を追及する私に、上司が言ったせりふです。その時は「えー、そんなことないですよー」と笑って答えましたが、いま思えば、思慮が足りない部下に、やんわりくぎを刺す一言だったのかもしれません。

 当時私はある広告キャンペーンを手がけていました。やりがいのある仕事を任されたことがうれしくて、張り切って毎日遅くまで働いていました。そんな時、制作物を依頼した会社で立て続けにミスが発生。少し気を付けていれば防げることばかりなのに…という思いは次第に怒りに変わり、間違いを訂正するだけでなく、思わず担当者の姿勢を批判するような言葉を発してしまったのです。

 あ、ちょっと言いすぎたかも! と感じた時には後の祭り。こんな依頼主のためにはがんばれないと思われたのでしょう。担当者はすっかり意欲を失い、指示した作業しか、してくれなくなりました。良い仕事をするために必死でがんばっていたはずが、伝え方を間違ったことで大切な協力者を失ってしまったのです。前向きなアイデアが出てこなくなったキャンペーンは停滞し、十分な成果を上げられないまま終了しました。

 20代最大級(?!)の失敗から学んだのは、どんな時でも、相手への敬意と配慮を忘れてはいけないということ。仕事は1人ではできませんし(空回りしていた昔の私に声を大にして言いたい)、誰だって間違うことはあります。特に、発注する立場の時や、自分が正しいと信じている時は言葉が強くなりがちなので注意が必要です。

 あれから十数年がたち、東京と沖縄でPR・コミュニケーションの仕事をするようになった今は、できるだけ、ゆとりのある伝え方を心がけています。たとえば、ミスを発見した! と思っても、こちらが誤解している可能性を考えて、「行き違いがあったら申し訳ないのですが」と前置きしてから確認する、すぐに訂正してくれたら「迅速なご対応ありがとうございます。印刷前に気付けて良かったです」と感謝を伝えるなど、相手も自分も追い込まないような工夫をしています。

 仕事で必要なことはきちんと伝える。ただし、表現には細心の注意を払う。私自身まだまだ足りないことも多いですが、気持ちよく働き続けるためにも大切にしていきたい仕事術の一つです。(コミュニケーションスタイリスト)