沖縄県名護市内で56年間、営業してきた老舗のヤギ料理店が1月いっぱいで幕を閉じた。「ひんぷん山羊料理」(市東江)の宮里ヨシ子さん(88)は、10歳年上の夫・源照さんが90歳で他界した後も、のれんを守り続けた。北海道から与那国まで全国から客がやって来たといい「たくさんの人にひいきにしてもらい、たくさんの思い出がある」と感謝した。

「ヤギ汁にヨモギを入れたのは私が最初だった」と話す宮里ヨシ子さん=名護市東江

 今帰仁村天底尋常高等小学校を卒業した宮里さんは同級生らと伊江島に徴用され、25歳で源照さんと結婚。「源照はペルーでハム製造業の仕事をしていた。結婚した時から弁当の仕出しを開業した。旧名護町には仕出し弁当屋が2軒だけだったからもうかったよ」

 結婚2年後には、大東のひんぷんガジュマル近くでヤギ料理「ひんぷん山羊料理」を開業した。「当時は冷蔵庫もなくヤギは鮮度が落ちるため、仕入れた初日だけ刺し身を提供した」

 22年間営業し、店を現在の東江に移し営業を再開した。

 しばらくは大根や昆布を具として入れていたヤギ汁に、フーチバー(ヨモギ)も入れた。「アメリカの兵隊にもヒージャージョーグー(ヤギ好き)がいたよ。客の中には鍋を持って来て持ち帰る人も多かった」と振り返る。

 衛生面には気を付けて店を切り盛りしてきたという宮里さん。子ども2人、孫9人、ひ孫9人に恵まれた。「やがてひ孫がもう1人増える」と目を細める。

 店の看板の前に立ち「店も私も老朽化した。名残惜しいが年には勝てないね」と語った。(玉城学通信員)