沖縄県名護市辺野古の新基地建設で、翁長雄志知事の埋め立て承認取り消しは違法として、石井啓一国土交通相は17日午前、代執行に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。法定受託事務における代執行訴訟は2000年の改正地方自治法施行後、全国で初めて。埋め立てによる公益性と環境への影響などが争点になる。翁長知事は記者会見で、埋め立て承認や、その取り消しの権限は知事にあることから「違法と決めつけられるいわれはない」と反論した。

(右)代執行訴訟を受け会見する翁長知事=17日午後5時34分、沖縄県庁 (左)記者会見する石井国交相=17日午前、国交省

代執行訴訟 訴状骨子

(右)代執行訴訟を受け会見する翁長知事=17日午後5時34分、沖縄県庁
(左)記者会見する石井国交相=17日午前、国交省 代執行訴訟 訴状骨子

 米軍基地をめぐる国と県の対立は前例のない法廷闘争に突入した。

 国側は、翁長知事の承認取り消し処分を取り消すよう求めている。県側は戦後70年間の基地の過重負担、県外との負担の格差が新基地建設でさらに固定化すると訴え、埋め立ての必要性、合理性などを問う構えだ。

 裁判所は12月2日に第1回口頭弁論を開くことを決め、双方に通知した。

 県側は県議会12月定例会と日程が重なり、翁長知事が意見陳述できない可能性があるため、期日変更を求めたが、認められなかった。県は県議会の日程を調整する方針だ。

 訴状では、辺野古への移設で普天間飛行場の危険性除去や日米の信頼関係の維持につながるなど公益性が高い一方、辺野古の住民生活や自然環境への影響に十分配慮しており、利益が不利益を上回ると強調。受益的処分では法律的な瑕疵(かし)の有無にかかわらず、取り消しできないという最高裁判決を取り上げるなど承認取り消しを「違法」としている。

 石井国交相は閣議後会見で「承認取り消し処分は違法で、著しく公益を害する」と述べ、代執行訴訟が政府の一致した考えであると説明した。

 高裁が国交相の訴えを認めれば、期日を定め、承認取り消し処分を取り消すよう知事に命令する。その時点で知事の取り消し処分は効力を完全に失う。知事が従わなければ、国交相が代執行することになる。高裁が知事の主張を認めた場合、知事の取り消し処分の効力は戻る。いずれも7日以内に最高裁へ上告できる。

 那覇地方法務局の担当者2人は17日午前8時半ごろ、福岡高裁那覇支部を訪れ、訴状を提出した。

■知事「正当性を証言」 口頭弁論出廷の構え

 翁長雄志知事は17日夕、国の代執行提訴を受けて県庁で記者会見し「政府の態度は完全なダブルスタンダード」と厳しく批判した。12月2日の口頭弁論に出廷し、自ら証言する意思を重ねて示し「われわれの考えが正当であることを主張・立証したい」と法廷闘争に意欲を示した。

 知事は、政府が佐賀県での米軍オスプレイ訓練をあっさり断念したことなどを念頭に「46都道府県には何らしわ寄せをしない形で、沖縄で物事を処理しようとしている」と述べ、国の対応が二重基準だと強調した。

 その上で「辺野古の美しい海を埋め立て、新基地建設を強行しようとする政府の態度は多くの県民には理解することすらできない」と指摘。今回の提訴が、民意に背を向けているとの認識を示した。

 沖縄に集中する米軍基地が、ミサイル攻撃に脆弱(ぜいじゃく)とのリスクにも言及。「政府の主張する『沖縄の地理的優位性』は逆に安全保障上の足かせになりつつある」と述べ、新基地建設の無用性を繰り返した。

 裁判所には「憲法と法律に照らした判断をいただきたい」と要望した。