人生も折り返し地点を遠くに見る頃になると、ほとんどの事にあきらめともつかぬ感情で接している事に慣れてくる。それでも、人生の中に一つだけ、こだわり抜いた何かを持ちたかったと今更ながらに夢想する。

「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」の一場面

 広告は一切出さない、自己資金だけでの活動、手軽な小物やアクセサリーは作らない、洋服だけで世界と勝負する。と孤高の姿勢を保ち続けるファッションデザイナーのドリス・ヴァン・ノッテン。一切の妥協を許さないために先の条件を自分に課している。

 ドリスのファッションショーを背景に、彼の私生活や美しいものに対する愛が語られてゆく。パートナーとの食事のために、庭の草花をいとおしく生ける姿が指の先まで美しい。実行した者と夢想で終わった者の隔たりがあまりに大きすぎて、感嘆の93分!(スターシアターズ・榮慶子)

◇シネマパレットで17日から上映予定