◆第1部 起業家たち  LiLz(リルズ)

 「第4次産業革命」と呼ばれる技術革新が進む中、人工知能(AI)の領域に挑むベンチャーが琉球大学構内にある。「LiLz(リルズ)」。IT企業レキサスで、プロダクトマネージャーとしてウェアラブルデバイスの開発などに携わった実績のある大西敬吾氏(45)が中心となり、昨年7月に設立した。

人工知能(AI)の領域に挑む大西敬吾氏(左から2人目)らLiLzのメンバー=西原町・琉球大学構内のオフィス

 同社のコアメンバーは5人。大西氏がレキサス時代、優れたプログラミング技術にほれ込んだというヤクブ・コウジェイチク氏(30)や、機械学習の領域を専門とする研究者で、沖縄科学技術大学院大学(OIST)やIBM東京基礎研究所などを渡り歩いた大塚誠氏(41)らが名を連ねる。

 大西氏は社長である自身を含めて「チーム」と呼ぶ。そこには、AIや機械学習に関心を持ったメンバーが「自然につながっていった」というこれまでの成り立ちや、相互の信頼がある。

 会社の方針も話し合いを重ね、「AIの技術を活用してIoT(モノのインターネット)の分野で社会的な課題を解決する」と決めた。

 大西氏は「創業からまだ半年余り。公表できる成果はあまりないんですよね」と苦笑するが、明確なビジョンと確かな技術、チームの魅力が周囲の目を引き付ける。

 昨年12月には、パソコンやゲーム機向けの画像処理半導体を手掛ける米エヌビディアから、AI技術を活用したスタートアップを支援する「インセプションプログラム」のパートナー企業に認定された。

 リルズが今、最も力を注ぐのがAIを使った「カウント」。瞬時に目の前のモノを数えるというシンプルな発想だが、細胞の数から交通量まで、活用可能な領域は広い。

 今後、IoTの普及で情報通信量の激増が予想される中、画像などの解析をクラウド側に頼らず、機器側でもできるような高度な研究開発も進めている。

 一方で、ヤクブ氏が中心となって自動運転技術の研究にも着手。技術革新の種を広く取り込みながら、将来の可能性を蓄える。

 現在は大西氏自らも企業へのコンサルティングなどで売り上げを作り、外部からの資金調達に極力頼らずに研究を支えている。

 今後、「本業」に乗り出す時にはパートナー企業との「共同開発」の形で資金を獲得していく考えだ。

 あくまで研究とチームワークを優先し、より高みを目指すリルズ。大西氏は「今はしっかりと地固めする時期。確かな技術力で顧客の問題をしっかり解決していけば、おのずと成功は付いてくる」と確信している。(政経部・島袋晋作)=第1部おわり。