2018年(平成30年) 6月24日

社説

社説[羽生選手連覇]王者が見せた「逆境力」

 大けがからの復帰戦で見せてくれたのは、心を揺さぶる演技と逆境に負けない強い精神力だった。

 平昌冬季五輪のフィギュアスケート男子で、羽生結弦選手が金メダルを獲得した。ソチ五輪に続く2連覇は、男子では66年ぶりとなる快挙である。

 氷上の王者に惜しみない拍手を送りたい。

 ショートプログラムをノーミスでこなしトップ発進した羽生選手は、フリーの「SEIMEI」で連覇に挑んだ。

 陰陽師・安倍晴明を象徴する印象的なポーズからの滑り出し。冒頭の4回転ジャンプがきれいに決まると、会場から大きな歓声がわき起こった。続く4回転も流れるように着氷。連覇のプレッシャーを感じさせない落ち着いた演技だった。

 後半、ジャンプでバランスを崩す場面があったが、けがをした右足で必死に踏ん張った。たぶん体力は限界に近かっただろう。それでも優雅なスケーティングと鬼気迫る演技は最後まで見る者を魅了した。

 昨年11月、練習中に転倒して右足首靱帯(じんたい)を損傷した。歩くこともできない時期が続き、氷上練習を再開したのは今年に入ってから。焦る気持ちを抑えて徹したのが、地道な陸上トレーニングである。ぶっつけ本番の状態にもかかわらず、培ってきた地力を精神力と集中力が支えた。

 「自分がやりきれたなと思う演技ができた。右足が頑張ってくれた」。試合後のインタビューで語った言葉が、この間の試練と努力を物語っている。

■    ■

 いくつもの困難を乗り越え強くなってきた選手である。

 仙台市出身で東日本大震災ではスケート靴を履いたまま逃げ、練習場が再開されるまで全国のリンクを転々とした。

 折れない心ともいうべき「逆境力」の根底にあるのは、復帰戦となったオリンピックでもかみしめた、滑る喜びではなかったか。

 前回、ソチで優勝した際、「悔しい」とコメントしたのは有名な話である。金メダルに輝いたものの、ジャンプで転倒したことが不満だったからだ。

 連覇でそのミスを払拭(ふっしょく)できたことがうれしかったとも話している。

 勝っても「もっと磨いていける」と自らの限界を引き上げ、負けても「この経験はプラスになる」と成長につなげる。 

 挑戦し続ける努力の天才がつかんだ世界一だ。

■    ■

 フィギュアスケートは長く欧米勢が強さを誇ってきた競技である。近年、目立っているのがアジア勢の活躍だ。

 今回、フィギュア男子では、20歳の宇野昌磨選手が銀メダルを獲得し、日本の層の厚さを見せつけた。

 宇野選手にとって羽生選手が「憧れの存在」であるように、今後、宇野選手に憧れて後を追いかける子が出てくるに違いない。

 平昌の「ワンツーフィニッシュ」は、「お家芸」として新たな時代の幕開けを予感させる。

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