◆青葉のキセキ−次代を歩む人たちへ− 第3部 自分らしく生きる 亮太「普通」を問う(中)

母と自身の性や将来について話す平良亮太=2月、那覇市内

 「親へのカミングアウトは、社会へのアプローチより高い壁だ」。今年2月、那覇市内の飲食店で母と向き合い、平良亮太(23)はそう感じていた。

 お互いどこか落ち着かない。緊張を隠すように照れ笑いしながら、騒がしい店内でぽつりぽつりと会話が始まる。母は「亮太の口からまだ詳しくは聞いていない」と切り出すが、質問するわけでもない。「自分の口からちゃんと話してくれるのを、待ってるよ」と優しくほほ笑む。亮太は「うん」と返事をしたが、周りの騒音にかき消されそうな小さな声だった。

 昨年1月、将来の進路を聞く母を前に、亮太は号泣したことがあった。母は亮太の涙に「気付いているよ」と声を掛けた。亮太はそれで伝わったと思っていた。

 亮太が飲食店に持参した中学の卒業アルバムをめくると本人はほとんど写っていなかった。「なんで?」と顔をのぞき込む母。亮太は「写りたくなかった。隠れてた」と言葉少なに理由を語る。

 体調不良で体育を休んだことも母は知らなかった。「内緒にしてた。学校休むほどじゃなかったし」と強がるように言う亮太に、母は不安そうに「学校楽しかったよね? 友達はいっぱいいたんだよね?」と言葉を選ぶように問い掛ける。「大丈夫だってば」。母はそれ以上聞かず、しばらくの沈黙が続いた。

 亮太は社交的な性格で反抗期もなく勉強もできる自慢の息子。学校の三者面談は母の楽しみですらあった。親の立場としては、医者や教師、公務員など経済的に安定している職業に就くことを期待するのが「普通」。亮太も期待通りに勉学を修めていた。

 両親は亮太がゲイだと気付き、尊重し支えると決めていた。だが母は、LGBT(性的少数者)の理解を広める活動には複雑な気持ちもある。「まだ社会が追い付いていない。顔や名前を出して傷つくことがあるんじゃないか…」

 「大丈夫。嫌なことを言う人がいたら、その人の所へ行って説明する」。亮太は母の目を真っすぐに見つめて断言した。「強くなったね」。うっすら涙を浮かべた母に、亮太もぐっと奥歯をかみ涙をこらえた。

 「制度を変えることと、みんなの考え方を変えること。二つからのアプローチが必要」。亮太は母に説明するが、経済的に自立できるか、仕事がお金になるのかは正直まだ分からない。「あなたの隣にいるよと認知させて、仲間を増やすことが今できること」。仲間は確実に増えてきている。亮太はがちゆんのメンバーを思い浮かべ、そう確信していた。=敬称略(社会部・川野百合子)

<亮太「普通」を問う(下)に続く>