政府は週内にも決定する「1億総活躍社会」に向けた緊急対策に、2020年代初頭までの「介護離職ゼロ」を盛り込む。

 安倍政権がアベノミクス「新三本の矢」の一つに掲げる介護離職ゼロを目指して、特別養護老人ホーム(特養)などの施設整備を加速させ、介護休業中の給付金を引き上げる方針だ。

 親の介護のために仕事を辞めざるを得ない状況が改善されることに異論はない。ただ政府の政策には一貫性が感じられず、掛け声倒れに終わるのではないかとの懸念を抱く。

 総務省の12年就業構造基本調査によると、介護や看護を理由にした離職者は年間10万人を超えている。見逃せないのは、多くが40代、50代といった働き盛り世代で、全体の8割以上を女性が占めていることだ。

 家族の負担、とりわけ「妻、嫁、娘」に集中していた介護を、社会全体で引き受けようと2000年にスタートしたのが介護保険制度だった。お年寄りや家族を支える制度として定着する一方、家庭の中では女性が仕事との両立に苦労するケースが目立ち、負担が偏る現実は変わっていない。

 費用が安く人気の高い特養に関して、国は今年4月に入所条件を厳格化し、原則、要介護3以上としたばかりである。

 たとえ施設を増やしても、入居基準が厳しいままでは、介護離職ゼロは甘い夢に終わってしまう。 

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 飛行機や新幹線で遠くに住む親の家に通う「遠距離介護」、独身の娘や息子が1人で担う「シングル介護」という言葉が一般化するくらい、仕事と介護の両立に悩んでいる人は多い。

 それなのに両立支援のために設けられた介護休業制度の取得率は3・2%(12年)と極端に低い。

 制度上、家族1人につき通算93日まで休みを取ることが可能だが、短い上に分割取得が困難など使い勝手の悪さが指摘されている。収入減や会社に迷惑を掛けるといった経済的、心理的な壁も大きい。そもそもの問題は介護休業に対する理解が社会全体に広まっていないことである。

 団塊の世代が75歳以上になる25年度には、介護が必要な高齢者が爆発的に増える。

 仕事と育児の両立を推し進めてきたように、仕事と介護の両立ができる支援策を強化し、柔軟な働き方のモデルを構築する必要がある。

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 今、介護の現場で深刻化しているのは職員不足だ。給与の低さと仕事のきつさが原因で、せっかく資格を取得したのに転職する人が後を絶たない。

 4月の介護報酬改定で職員の賃金アップに充てる処遇改善加算が拡大されたものの、事業者に支払われる介護報酬が引き下げられたため、改善の効果は限定的である。

 給与や労働条件などを置き去りにしたまま施設だけ造っても、働く人がいないという事態になりかねない。

 介護職員の離職ゼロも政策に掲げるべきだ。