およそ5年に1度見直され、国の施策の指針となる「高齢社会対策大綱」が閣議決定された。

 65歳以上を一律に高齢者とみなす考えを改め、公的年金の受給開始年齢を70歳以降も選択できるようにする方針などが柱である。

 確かに一昔前のお年寄りのイメージとは違う、若々しく活発なシニアが増えている。高齢者の健康に関するデータも「10~20年前に比べ5~10歳若返っている」ことを示す。

 全ての世代が幅広く活躍できる「エイジレス社会」を目指すという大綱の考え方は、時代の流れに沿ったものだ。

 現在、年金受給の開始年齢は原則65歳、本人が申し出れば60~70歳の間で選択できる。65歳より遅らせると、その分、毎月の受給額が増えていく仕組みである。

 それをさらに70歳以降も選択できるようにする大綱見直しは、急速に進む少子高齢化を背景としている。

 意欲と能力のある高齢者に社会の「支え手」となってもらうことで、先細る労働力を補い、年金システムの維持を図りたいということなのだろう。

 仕事に生きがいを見いだし、社会で活躍する高齢者が増えることは心強い。年金に頼らなくても済む生活は理想でもある。

 ところが70歳まで受給開始を延ばせば最大42%の増額となる現行制度の利用率はわずか1・5%にとどまっている。

 なぜなのか。

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 働く高齢者は年々増えていて、全就業者に占める65歳以上の割合は2016年時点で11・9%。働くシニア世代の増加は、受給額が増えるのを待つ余裕がない働く年金世代の増加と言い換えることもできる。

 大綱のもう一つの柱は、生涯現役を実現するための定年延長や継続雇用延長を進める企業への支援である。

 既に多くの職場で再雇用制度など量的な受け皿整備が進むが、年収の大幅ダウンなど処遇面に不満を持つ人は少なくない。

 高齢者のやる気を引き出し、賃金収入だけでも生活できるようにするには、定年延長を含む待遇の底上げが求められる。

 ただ高齢者が力を発揮する場は職場だけではない。地域行事やボランティア活動など多種多様だ。時間にも心にも余裕のあるシニアだからこそできる社会参加にも目を向けたい。 

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 高齢期の特徴は、健康状態や暮らし向きの個人差が大きいことである。病気や貧困など苦しい状況に置かれている人たちへの目配りを忘れてはならない。

 元気な高齢者に安心して社会の支え手となってもらうには、支えてほしいときにすっと手が差し伸べられ、尊厳ある生き方ができる社会の構築が必要だ。 

 財政状況の厳しさを浮き上がらせる大綱見直しを巡っては、受給開始年齢の一律引き上げにつながらないかの懸念も残る。年金不信を招かないよう慎重に議論を進めてもらいたい。