環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意に伴う政府の政策大綱がまとまった。

 安い輸入品の増加で打撃を受ける農林水産物に保護策を講じ、海外展開に消極的だった中小企業の支援に力を入れるなど、攻守両面から施策を示すものだ。

 「攻め」の項目が抽象的なのに対し、「守り」の対策が手厚く見えるのは、生産者の反発を何とか和らげたいとの思惑からだろう。

 新たに輸入枠が設けられるコメの価格を下支えするため、輸入量に相当する国産米を政府が買い入れるほか、関税が大幅に引き下げられる牛肉と豚肉の所得補填(ほてん)を法制化し、補填割合を拡充する対策などを明記する。

 農業団体の要望に応えたとはいえ、最終的に8割を超える農林水産物の関税が撤廃される前例のない貿易自由化を前に、不安をふり払うのは容易ではない。

 TPPによる影響の試算も公表されないまま、大綱の効果を測りかねているというのが生産者の本音ではないか。

 思い出すのはコメ市場を一部開放した90年代の関税貿易一般協定(ガット)ウルグアイ・ラウンドだ。当時、6兆円もの予算がつぎ込まれたが、対策という名目で生産性向上とは関係の薄い公共事業にお金が使われ、大きな批判を浴びた。結果的に体質強化は図られなかった。

 来年夏には参院選が控えている。大筋合意から2カ月足らずでまとまった今回の政策に、「ばらまき」の記憶がよみがえる。

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 決定した大綱には、砂糖に他の素材を加えた加糖調製品の輸入拡大の影響を抑えるため、「加糖調製品を新たに調整金の対象とする」ことも盛り込まれた。輸入品に課せられる調整金は、サトウキビ農家への交付金に充てられる。

 県内農業関係者は対策を評価する一方で、生産基盤の強化といった具体策の欠如を指摘する。

 TPPを「攻めの農業に切り替えるチャンス」と語る安倍晋三首相らの目線と、「離農者が増え、地域が崩壊する」と懸念する県内市町村長らとの間には大きな溝が横たわる。

 気候やその歴史によって、ほかとは違う特色をもつ沖縄の農業。基幹作物であるサトウキビは、台風が多く、他の作物を栽培しにくい条件の中で、島の経済を支えてきた。農業は文化とも深く結び付いており、地域を守るという視点も忘れないでほしい。

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 TPP交渉は秘密主義が貫かれ、情報開示に乏しく、大筋合意まで国民は内容を知ることができなかった。

 さらに安倍政権が臨時国会の召集を見送ったため、サトウキビを含む「農業重要5項目」を関税撤廃の例外とする国会決議が守られたかなど、合意内容の検証もほとんどされていない。

 関税の撤廃や削減は国内農業に長期にわたって影響を及ぼす。その影響は農業の構造転換にとどまらない。大綱決定を出発点に、後継者の育成など農業衰退に歯止めをかける具体的な政策で、地域全体の活性化につなげるべきだ。